○病院
病室、個室
宏樹「過労…?」
父親「いやー、心配かけてすまなかった」
反対側のベット横にいる芳樹
芳樹「ここんとこ休みなしで働き過ぎたのが原因だってさ」
父親「ついつい昔の感覚で働いてしまうが、やはり歳を取っているんだな」
宏樹「はぁ…もう若くないんだから無理するのはやめてくれよ。まぁ、大事にならなくてよかった」
芳樹「軽度だけど、念の為2、3日入院だってさ」

病室を出る宏樹と芳樹。廊下の長椅子に弥生の姿。立ち上がる弥生。
芳樹「あれ、何でいんの?」
宏樹「ちょうど一緒に出かけてたんだよ」
弥生「お父様大丈夫でした?」
宏樹「うん。過労で倒れたから数日入院すれば大丈夫だろうって。あ、よし、父さんの明日からの予定後で教えて」
弥生(代わりをしないといけないこともあるし、忙しくなるよね)
「あの、私先に帰りますね」
宏樹「あっ、ごめんね。受付までおくっ…」
芳樹「俺が送るから兄貴はここにいて」
宏樹「ありがとう。弥生ちゃん、後で連絡するね」
弥生「はい」

病院を出てタクシーに乗り込む弥生。ドアに手を置く芳樹。
芳樹「わざわざありがとな。しばらく兄貴忙しくなると思うけど、無理してないかだけみてくれると助かる」
弥生「はい、任せてください。芳樹さんも無理せず」
芳樹「おう」

○夜、マンション
キッチンで料理中の弥生
弥生(宏樹さん、遅くなるかもだよね。チンして食べやすいものにしておこうかな)
伏し目がち
弥生(なるべく意識はしないようにしているけど、宏樹さんはいつか社長になる立場の人。もし将来結婚したら、私は支えるために…)

1人夜ご飯を食べる弥生。
弥生(その夜は結局本社に泊まると連絡があり、宏樹さんは帰ってこなかった。次の日からも宏樹さんは業務に追われ、ゆっくり顔を合わせないまま、私は夏休みに)


○日中、スイミングスクール
受付で仕事をする弥生。
他のスタッフ「望月さん、休憩いってね」
弥生「あ、はい」

スタッフルームに入ると土田がいた。
土田「お疲れー」
弥生「お疲れ」

パンを食べながら休憩する弥生
土田「…。」
弥生をじっと見る。
弥生「…なに?」
土田「元気ないけど、なんかあった?」
弥生「えっ、なんで分かったの!?」
土田「さすがに分かるって。たよちゃんや陽奈でも今のモッチー見たら同じこと言ったと思う」
弥生「あはは。…なんかさ、相手の踏み入れていい領域?範囲?って関係性によって違うじゃん?他人、知り合い、友達、恋人、家族…。相手がここまで良いよって言ってくれるのを待ってるのが正しいのか分かんなくなってきて…って何言ってんだって話だよね」
土田「羽瀬川さんの話だろ?」
弥生「…うん」
土田「羽瀬川さんのことよく知らないけど、モッチーのこと大切なのはすげー分かるんだよ。だからモッチーが何か踏み込もうとしてもちゃんと受け止めてくれる人なんじゃないの?」
弥生(…そうだ、宏樹さんはちゃんと向き合ってくれる人)
「ありがとう、ツッチー」

夜、マンションに帰りつき、玄関を開けると宏樹の靴があった。
弥生(あ、帰ってきてるっ!)

リビングのドアを開けると宏樹の後ろ姿。宏樹が振り向こうとした瞬間、弥生が抱きつく。
宏樹「わぁっ!?」
弥生「おかえりなさい!」
宏樹「あはっ、それは僕のセリフ。…おかえり」
弥生「ただいま」
見つめ合う2人は自然と顔が近づきキスをする。
宏樹「すれ違いばっかでごめんね?」
弥生「ううん。…宏樹さん、好き」微笑む
宏樹「…それは反則だよ」
再びキス、口元アップ

宏樹の寝室で薄暗い中、ベット上のシーン。布団の中で裸の2人。
宏樹「弥生ちゃん…愛してる。今日は1回じゃ足りない…」色っぽい表情
ちゅ…

布団の中で向き合う2人
弥生「宏樹さん、あの…」
宏樹「ん?なぁに?」
弥生「一度お父様にご挨拶することは可能でしょうか?」
宏樹「えっ」
弥生「私が大学生だから立場上紹介しにくいことは理解しています。交際を反対されることも覚悟の上でお会いしたいと思っていて…」
宏樹「…。」
弥生「もちろん、宏樹さんがやめてほしいと言うなら無理強いはしません。ただ、両親に会ってくれて私はすごく嬉しかったし、伝えることで何かあった時に出来ることが変わってくると思うので」
ぎゅっ…弥生を抱きしめる
宏樹「…ありがとう。父親の体調と僕の仕事が落ち着いたら紹介の場を設けるよ」


8月
○夜、夏祭り会場
私服姿の弥生、多世、陽奈が露店のそばを歩いている。
陽奈「あ、ベビーカステラ売ってる。買ってきてもいいー?」
弥生「うん」
陽奈離れる
多世「彼氏さん今日は遅いの?」
弥生「仕事終わった後、取引先の方とご飯って言ってた」
多世「へぇー、相変わらず忙しい彼ね。ケンカとかするの?」
弥生「まだ付き合って少しだから当たり前かもだけど、ケンカしそうになったことすらない」
多世「そりゃそうか、モッチーも優しいし、彼氏さん寛大で大人の余裕ありそうだし。運命的な出会いして相性良いなら、さっさと結婚すればいいのに」
弥生「うーん…私はまだ家庭に収まる気はないよ」
多世「ふふ、そういうとこがモッチーらしいわね」


次の週
○ 日中、ホテル
ホテルの入り口外で、外観を見上げる。
弥生「ここ…」
宏樹「覚えてる?初めて会った仮面パーティーが開催されたホテル」

○チャペル
チャペルの扉を開ける宏樹。中に入っていく2人。
弥生「夜も綺麗だったけど、明るい時間の雰囲気も素敵ですね!」
宏樹「そうだね。…弥生ちゃん、こっち来て」

祭壇の前に向き合う2人。
宏樹「今日は弥生ちゃんと出会って1年記念なんだよ。付き合った日も大事だけど、あの日出会わなかったら、こうして隣にいることもなかったかもしれない。だから僕にとって大切な日なんだ」
弥生「…私にとっても大切ですよ。助けてくれたあの時から、ずっと優しくて、今も変わらず守ってくれて、本当に感謝してます」
すっ、弥生の手を取り
宏樹「…僕はもう弥生ちゃん以外愛せない。これから先の人生、弥生ちゃんだけを愛するよ」
弥生(これってまるで…)
宏樹「僕は弥生ちゃんには自分の好きに人生を歩んでほしいと思ってる。うちの会社のことは気にせず、やりたい仕事をしてほしいし。…ただ一つだけわがままを言えるなら、大学を卒業した後の人生を僕と一緒に歩んでほしい」
弥生(すごく嬉しいことなのに…)
「私、わがままなのかもしれません。宏樹さんとずっといたい気持ちは本当なのに、自分の夢や目標も大事にしたくて…。大きな会社を背負ってる人の妻になるなら支えることを1番に考えないとダメなのは分かってて…だけどっ」
ぎゅっ…
遮るように抱きしめる。
宏樹「だーかーらー、弥生ちゃんは僕の奥さんとして好きに生きていいの!僕は僕で会社のことを頑張るし、弥生ちゃんは弥生ちゃんでスポーツ関係の仕事を頑張る。いつか子供ができたらそこは夫婦として協力し合って育てよう。付き合う時に言ったでしょ?俺の立場は忘れて、1人の人間として判断してほしいって。結婚も同じだよ。立場は関係なく、1人の男として僕と結婚したいかを決めてほしい。卒業したらもう一度プロポーズするから、その時に返事くれる?」
抱きしめられたまま、頷く弥生
弥生「…はい」


数年後
○式場、チャペル
※式当日、挙式の前にファーストミートを行う2人。
ヴァージンロードに立つタキシード姿の宏樹の横顔、全身?
扉が開き、ドレスの足元のみ
ゆっくりと近づき、宏樹の肩をポンとたたく
振り返る宏樹
ウエディングドレス姿の弥生、微笑んで綺麗なショット、ブーケ持っている。
頬を染め驚き、そして微笑む宏樹
宏樹「…綺麗だよ」

弥生(あなたとだから乗り越えて今日がある。あなたとだから自分らしく生きていける。あの日出会ったのがあなたで良かった!)

2人が笑顔でハグするシーン。