前話の続き
向き合っている宏樹と元カレ全体図。
宏樹「それ、どういう意味?」
元カレ「もしあなたのことを死ぬほど好きな人が現れたら、弥生は身を引くよ」
宏樹「何でそんなこと言い切るの?」
元カレ「俺たちがそうだったから。そんで、好き同士のまま別れた」
宏樹(好きなまま…)
「まるで今も弥生ちゃんが自分を好きみたいな言い方だね」
元カレ「そうだと嬉しいけど」さらっと

○夜、マンション、リビング
寝る前の2人
宏樹「弥生ちゃんの部屋で一緒に寝てもいい?」
弥生「もちろん」
(珍しいな)

弥生の部屋
ベットで宏樹に腕枕をされ寝ている弥生。
弥生の寝顔を見ている宏樹。
宏樹(弥生ちゃんの気持ちを信じてるのに、なんでこんな余裕ないんだろ…。そんだけ好きってことか)


数日後
○大学、グラウンド
ランニングする学生たち。多世と土田の少し前を走る弥生と陽奈。
土田の顔からの土田目線の弥生の横顔。
多世「吹っ切れたんじゃなかったのー?」
土田「別にちょっと見ただけだよ」
多世「ふーん。あ、知ってる?モッチーの元カレもめちゃくちゃかっこいいのよ」
土田「何でそんなこと知ってんの」
多世「たまたま会ったの」
土田「へぇ。元カレよりも今カレのほうが俺には重要なんだよ」
多世「はいはい。あ、そろそろ会のこと決めなきゃ」

○夜、マンション、リビング
宏樹「弥生ちゃん、ごめん」
弥生「全然大丈夫ですよ」
宏樹「弥生ちゃんの誕生日に急きょ泊まりの出張が重なるなんて…。本当にごめんね?」
弥生「お仕事は仕方ないですよ。それに当日じゃなくてもお祝いしてくれるだけで嬉しいですから!」
宏樹「ありがとう、最高の時間をプレゼントするよ」


次の週
弥生の誕生日
○夜、土田のアパート
土田、多世、陽奈「モッチー!誕生日おめでとうー!!」クラッカーとともに
弥生「ありがとーー!」

テーブルの上にはピザやオードブル、飲み物。
多世「まさか当日お祝いできるとはねぇ」
陽奈「彼氏さん出張になって残念だったねー」
土田「今日遅くに帰ってくるんだっけ?」
弥生「うん、最終便で帰ってくるって言ってたから、日付過ぎてから会える感じかな」

ケーキを食べながら盛り上がる4人。
弥生のスマホの着信が鳴る。差出人を確認する
弥生(え…)
陽奈「出なくていいのぉ?」
弥生「うーん」
多世「もしかしてあの元カレ?」
弥生「うん…」
多世「別に電話にするくらいやましいことじゃないって。誕生日おめでとうぐらい言わせてあげなさいよ」

スマホを耳に当てながら玄関から出る弥生。
弥生「もしもし」
元カレ「今、大丈夫だった?」
弥生「少しなら」
元カレ「おめでと」
弥生「ありがとう。よく覚えてたね」
元カレ「たぶん一生忘れない」
弥生(不意にこういうこと言うのも変わらない…)
元カレ「ねー2人で会いたいんだけど」
弥生「無理だよ」
元カレ「彼氏いるから?」
弥生「うん」
元カレ「じゃあ、もうちょい話そ」

弥生「うん、おやすみ」
電話を切り部屋に戻ろうとする
弥生(付き合ってる時は電話してると会いたくなったけど、今は話せるだけで満足した。だって私が今、会いたいのは…)
宏樹「弥生ちゃん!」
振り返る
「えっ…」目を見開く
宏樹の姿、膝くらいまで?少し息切れ
弥生「え、どうして…」
宏樹「愛しの彼女の誕生日だから」笑顔

部屋
土田「電話長くね?」
陽奈「盛り上がってるのかもねぇ」
ガチャ
玄関のドアを見る3人。
弥生と斜め後ろに宏樹の姿。
ぽかーんとする3人。
土田「羽瀬川さん…」
宏樹「土田君、久しぶり。初めまして、弥生ちゃんとお付き合いしてます、羽瀬川です」
多世と陽奈に会釈。
宏樹「会の邪魔しちゃってすみません。弥生ちゃんのお祝いをしてくれてる皆さんにお願いするのは本当に申し訳ないんですが、残りの誕生日僕がもらってもいいですか?」優しく微笑む
ずきゅーん!となる多世と陽奈。
多世、陽奈「もちろんです!!」
宏樹「ありがとうございます」ぺこっ
弥生「みんなごめんね」
多世「主役が謝るのはだめよ!ほら、早く行って」弥生の荷物を渡す
弥生「ありがとう」

外を歩く2人。
弥生「何でツッチーのアパート分かったんですか?」
宏樹「前に隣に引っ越す話してた時、軽く情報教えてくれたでしょ?」
弥生「あーなるほど」

マンションに帰り着いた2人、リビング。
宏樹「お祝いのデートは今度だから…」
すっ
弥生の後ろに立った宏樹がネックレスを付ける。
下を向きネックレスを見る弥生。6月の誕生石が輝くデザイン。
弥生「綺麗…。宏樹さん、ありがとうございます」宏樹に体を向けて
宏樹「似合ってる。…お誕生日おめでとう」
キス
宏樹「大好きだよ…」
深くキス、そのままソファに押し倒す。ネクタイを緩める宏樹。
服やスーツを脱いだ2人が抱き合うショット。
弥生(心があったかくなる。宏樹さんの優しさが身体中に広がっていく)


次の日
○夜、リビング
ソファに座りテレビを見る2人。
横にいる弥生を見る宏樹。
宏樹「…ねぇ、弥生ちゃん」
弥生「ん?」
宏樹「もし僕のことを好きな強力なライバルが現れたらどうする?」
弥生「ふふ、何ですかその質問」
宏樹「うーん、例え話?」
弥生「…これは例え話じゃなくて、昔話なんですけど。まあまあ仲の良かった同じクラスの女子が、私の彼氏を好きだったんです。しかも、私が彼を好きになるよりもっと前から。そのことをたまたま盗み聞きしちゃって、その時にその子が、この恋が叶わなくてもいいから、せめて卒業まではみんなの彼でいてほしかった、って言ったんです。その彼すごくモテる人だったから。あー私はみんなの彼を一人占めしちゃったのかって、優越感に浸るよりも罪悪感のほうが先に来てしまって。だから、悩んだ末に好きだったけど、友達に戻ろうって振ったんですよ」
宏樹「それで彼は納得したの?」
弥生「やだって言われました。てっきり、いいよってすんなり言うと思ったから、初めて感情をむき出しにした彼をみて驚いたのを覚えています。…どちらかに好きの気持ちが無くなって別れるのと違って、お互いに好きが残ってるまま別れた時の行き場のない心を知ってるから…」
宏樹「…。」
弥生「もしライバルが現れても、宏樹さんを好きな限りは譲りません」笑顔 
目を軽く見開き、頬を染める宏樹
宏樹(俺はなんてバカなことを聞いたんだろ…)
ぐいっ、弥生を自分の膝の上に乗せる、向き合う形。
弥生「え!?ちょっと…」
ぎゅー、強く抱きつく
弥生「宏樹さん?」びっくりしている
宏樹「僕だって絶対離さないよ。どんなライバルが現れても必ず勝つから」
宏樹を愛おしそうに見つめる弥生
弥生(恋愛よりも他のものや人の気持ちばかり優先してきた気がする。そんな私が初めて譲れないと思えた存在)
幸せそうに見つめ合う2人の横顔