「本当にそう思ってくれてるの……?」
思わずつぶやいてしまい、沙耶はハッと手で口を押えた。
『沙耶?』
匠真の怪訝そうな声が聞こえてきて、あわてて口を動かす。
「な、なんでもないです! あの、私、もう休憩時間が終わるので切りますねっ。匠真さんはお疲れだと思うので、ゆっくりしてください。それじゃ!」
沙耶は通話を終了して、スマホをバッグに入れた。大きなため息をつきそうになって、あわててのみ込む。
(ダメダメ、お客さまには笑顔を見せないと!)
頬を軽く叩いて顔を上げ、歯磨きをするために洗面所に向かった。
六時過ぎに最後の客を見送り、今日出勤していたチエとノリ、それに二週間前から働きはじめた六十代半ばのアキコも六時で上がった。閉店作業は沙耶と涼花のふたりで行う。明日は休業日なので仕込みの必要がないため、平日よりも早く仕事が終わった。
「沙耶ちゃん、お疲れさま。今日はおかずが売り切れちゃったから、夜のまかないなしでごめんね」
すまなそうに言う涼花に、沙耶は首を横に振る。
「いいえ。お客さまがたくさん来てくださったってことですから、売り切れは私も嬉しいです」
それに、そもそも雇用契約に含まれているのは、昼のまかない提供だけなのだ。
「それもそうだよね。ありがとう。それじゃ、帰ろう」
涼花は裏口のドアに向かったが、ドアを開けようとして、「あっ」と声を出した。
「二階に本を忘れてきちゃった。沙耶ちゃん、先に出ててくれる?」
「わかりました」
涼花がバタバタと階段を駆け上がっていき、沙耶は裏口のドアを開けた。一歩外に出た瞬間、すぐ横の壁に匠真がもたれて立っているのを見て驚いた。
「えっ」
「沙耶、お疲れさま」
匠真は壁から体を起こして沙耶の前に立った。
「ど、どうしてここに?」
「沙耶に会いたかったからだ」
言うなり匠真は両手を広げて沙耶をすっぽりと腕の中に閉じ込めた。
「た、匠真さん!?」
「沙耶は俺に会いたくなかった?」
すぐそばで匠真の声が聞こえて、目の奥がじわりと熱くなる。
会いたかった。けれど、会っていいのかわからなかった。
思わずつぶやいてしまい、沙耶はハッと手で口を押えた。
『沙耶?』
匠真の怪訝そうな声が聞こえてきて、あわてて口を動かす。
「な、なんでもないです! あの、私、もう休憩時間が終わるので切りますねっ。匠真さんはお疲れだと思うので、ゆっくりしてください。それじゃ!」
沙耶は通話を終了して、スマホをバッグに入れた。大きなため息をつきそうになって、あわててのみ込む。
(ダメダメ、お客さまには笑顔を見せないと!)
頬を軽く叩いて顔を上げ、歯磨きをするために洗面所に向かった。
六時過ぎに最後の客を見送り、今日出勤していたチエとノリ、それに二週間前から働きはじめた六十代半ばのアキコも六時で上がった。閉店作業は沙耶と涼花のふたりで行う。明日は休業日なので仕込みの必要がないため、平日よりも早く仕事が終わった。
「沙耶ちゃん、お疲れさま。今日はおかずが売り切れちゃったから、夜のまかないなしでごめんね」
すまなそうに言う涼花に、沙耶は首を横に振る。
「いいえ。お客さまがたくさん来てくださったってことですから、売り切れは私も嬉しいです」
それに、そもそも雇用契約に含まれているのは、昼のまかない提供だけなのだ。
「それもそうだよね。ありがとう。それじゃ、帰ろう」
涼花は裏口のドアに向かったが、ドアを開けようとして、「あっ」と声を出した。
「二階に本を忘れてきちゃった。沙耶ちゃん、先に出ててくれる?」
「わかりました」
涼花がバタバタと階段を駆け上がっていき、沙耶は裏口のドアを開けた。一歩外に出た瞬間、すぐ横の壁に匠真がもたれて立っているのを見て驚いた。
「えっ」
「沙耶、お疲れさま」
匠真は壁から体を起こして沙耶の前に立った。
「ど、どうしてここに?」
「沙耶に会いたかったからだ」
言うなり匠真は両手を広げて沙耶をすっぽりと腕の中に閉じ込めた。
「た、匠真さん!?」
「沙耶は俺に会いたくなかった?」
すぐそばで匠真の声が聞こえて、目の奥がじわりと熱くなる。
会いたかった。けれど、会っていいのかわからなかった。

