涼花は沙耶から静枝へと視線を移した。
「外は寒いですし、中でお話しされてはいかがですか?」
静枝は断固とした口調で答える。
「いいえ。代田さんとふたりだけで話したいの」
静枝の口ぶりから、あまりいい話ではないと感じる。なにを言われるのか不安だったが、わざわざ訪ねてきた彼の母を無下にはできなかった。
「涼花さん、私、行ってきます」
沙耶の言葉を聞いて、涼花は迷うように視線を動かし、少ししてうなずいた。
「わかった。でも、せめてコートは着ていって」
「すぐ済むわ」
静枝がぴしゃりと言い、涼花は唇を引き結んだ。
静枝がドアを開けて外に出たので、沙耶も続いた。外はひんやりしていて、それが余計に緊張と不安を高める。
静枝はドアから少し歩いてテラスの横に来ると、足を止めて沙耶を振り返った。
「あなた、匠真がニューヨークの病院で働いていたことはご存じよね?」
唐突に聞かれて戸惑いながらも、沙耶はうなずく。
「はい」
「それなら、匠真がどうして日本に戻ってきたかも知ってるわよね?」
「いいえ、理由は聞いていません」
「あら、そう。わかりやすく言うと、病院を継ぐためなの」
「そうだったんですか」
「だから、あなたじゃダメなのよ」
静枝の冷たい言葉に、沙耶の心臓がドクンと打つ。
「ダメ、とはどういうことでしょうか」
「そんなの、言うまでもないでしょう? 次期院長である匠真と結婚する女性は、彼と一緒に病院を支えられる女性でなければならないの。あなたのようなカフェ店員ではなくてね」
「私たちはまだ付き合いはじめたばかりで……」
「結婚を約束しているわけじゃないから、付き合っても構わないでしょって言いたいの?」
「いえ、そういうわけでは」
匠真とは正式に付き合うことになったが、彼にプロポーズされたわけではない。匠真とずっと一緒にいたいと思う反面、今は涼花のこともあって、自分の気持ちをどうしていいかわからないのだ。
口ごもる沙耶に、静枝が強い口調で言う。
「伊吹会総合病院にはとても優秀な研修医がいるの。山根凛子さんって方でね。お父さまも、うちほどではないけれど、そこそこの規模の病院で院長をされているのよ。だから、病院経営のなんたるかもわかっているわ。それにね――彼女も匠真との結婚に乗り気なの。いずれふたりは婚約することになるわ」
「外は寒いですし、中でお話しされてはいかがですか?」
静枝は断固とした口調で答える。
「いいえ。代田さんとふたりだけで話したいの」
静枝の口ぶりから、あまりいい話ではないと感じる。なにを言われるのか不安だったが、わざわざ訪ねてきた彼の母を無下にはできなかった。
「涼花さん、私、行ってきます」
沙耶の言葉を聞いて、涼花は迷うように視線を動かし、少ししてうなずいた。
「わかった。でも、せめてコートは着ていって」
「すぐ済むわ」
静枝がぴしゃりと言い、涼花は唇を引き結んだ。
静枝がドアを開けて外に出たので、沙耶も続いた。外はひんやりしていて、それが余計に緊張と不安を高める。
静枝はドアから少し歩いてテラスの横に来ると、足を止めて沙耶を振り返った。
「あなた、匠真がニューヨークの病院で働いていたことはご存じよね?」
唐突に聞かれて戸惑いながらも、沙耶はうなずく。
「はい」
「それなら、匠真がどうして日本に戻ってきたかも知ってるわよね?」
「いいえ、理由は聞いていません」
「あら、そう。わかりやすく言うと、病院を継ぐためなの」
「そうだったんですか」
「だから、あなたじゃダメなのよ」
静枝の冷たい言葉に、沙耶の心臓がドクンと打つ。
「ダメ、とはどういうことでしょうか」
「そんなの、言うまでもないでしょう? 次期院長である匠真と結婚する女性は、彼と一緒に病院を支えられる女性でなければならないの。あなたのようなカフェ店員ではなくてね」
「私たちはまだ付き合いはじめたばかりで……」
「結婚を約束しているわけじゃないから、付き合っても構わないでしょって言いたいの?」
「いえ、そういうわけでは」
匠真とは正式に付き合うことになったが、彼にプロポーズされたわけではない。匠真とずっと一緒にいたいと思う反面、今は涼花のこともあって、自分の気持ちをどうしていいかわからないのだ。
口ごもる沙耶に、静枝が強い口調で言う。
「伊吹会総合病院にはとても優秀な研修医がいるの。山根凛子さんって方でね。お父さまも、うちほどではないけれど、そこそこの規模の病院で院長をされているのよ。だから、病院経営のなんたるかもわかっているわ。それにね――彼女も匠真との結婚に乗り気なの。いずれふたりは婚約することになるわ」

