「それより、匠真くんとはどんな感じ? 彼、普段はクールだけど、やっぱり沙耶ちゃんの前だと甘い顔も見せるのかな?」
急に匠真の話を持ち出されて、沙耶は目を見開いた。みるみる頬が赤くなり、それをごまかすように紅茶のカップを取り上げる。そんな沙耶を見て、涼花はクスクスと笑った。
「図星? 意外だけど、きっとそうなんだろうなぁ。匠真くん、沙耶ちゃんを見るとき、いつも優しい目をしてるもん」
「そ、そうですか?」
「そうだよ。そのうちチエさんたちにも気づかれるんじゃないかな」
涼花はクスリと笑って、視線を窓の外に向けた。
チエさんとヒーコさんに気づかれたら、きっとあれこれ言われそうだなぁ、と沙耶が思ったとき、涼花がぼそりとつぶやいた。
「いいなぁ……」
涼花のほうを見たが、ひとりごとだったらしく、涼花は窓の外を眺めている。その横顔は見たことがないくらい寂しげだ。
父が退院した日、涼花は『好きな人がそばにいてくれるのがうらやましい』と言っていた。
沙耶は涼花の視線の先を追って窓の外を見た。プラチナと同じような二階建ての建物が何軒かあり、その少し向こうに、曇り空を背景にして伊吹会病院の大きな白い建物が見える。
(匠真さん、ちゃんと食事をとれてるのかな……)
夜ご飯を作ってあげたいな、と思ったとき、一階からノリの声がした。
「涼花さーん、業者の人が来ましたよ~」
その声に我に返って、涼花が「あっ」と立ち上がった。
「そうだった! 約束してたんだった! 沙耶ちゃんはもう少しゆっくりしててね」
涼花は残りのサンドイッチを口に詰め込んでコーヒーで流し込み、バタバタと一階に降りていった。
「おいしかったよ。また来るねぇ」
午後六時になって近所の高齢女性三人が席を立ち、沙耶と涼花は「ありがとうございました」と頭を下げた。三人がドアから出ていき、本日の営業はこれで終了だ。
「今日もお疲れさま、ありがとう」
涼花の声に、沙耶は「涼花さんもお疲れさまです」と声をかけて、赤いドアにかけられた〝OPEN〟の札をひっくり返して〝CLOSED〟にした。
「それじゃ、ちゃちゃっと明日の仕込みをしちゃおうか」
涼花が言ってテキパキと動き始めた。その姿は普段どおりで、昼休みの悲しげな様子は少しも感じられない。
だからといって、そんなにすぐに解決するような問題だったとも思えない。
急に匠真の話を持ち出されて、沙耶は目を見開いた。みるみる頬が赤くなり、それをごまかすように紅茶のカップを取り上げる。そんな沙耶を見て、涼花はクスクスと笑った。
「図星? 意外だけど、きっとそうなんだろうなぁ。匠真くん、沙耶ちゃんを見るとき、いつも優しい目をしてるもん」
「そ、そうですか?」
「そうだよ。そのうちチエさんたちにも気づかれるんじゃないかな」
涼花はクスリと笑って、視線を窓の外に向けた。
チエさんとヒーコさんに気づかれたら、きっとあれこれ言われそうだなぁ、と沙耶が思ったとき、涼花がぼそりとつぶやいた。
「いいなぁ……」
涼花のほうを見たが、ひとりごとだったらしく、涼花は窓の外を眺めている。その横顔は見たことがないくらい寂しげだ。
父が退院した日、涼花は『好きな人がそばにいてくれるのがうらやましい』と言っていた。
沙耶は涼花の視線の先を追って窓の外を見た。プラチナと同じような二階建ての建物が何軒かあり、その少し向こうに、曇り空を背景にして伊吹会病院の大きな白い建物が見える。
(匠真さん、ちゃんと食事をとれてるのかな……)
夜ご飯を作ってあげたいな、と思ったとき、一階からノリの声がした。
「涼花さーん、業者の人が来ましたよ~」
その声に我に返って、涼花が「あっ」と立ち上がった。
「そうだった! 約束してたんだった! 沙耶ちゃんはもう少しゆっくりしててね」
涼花は残りのサンドイッチを口に詰め込んでコーヒーで流し込み、バタバタと一階に降りていった。
「おいしかったよ。また来るねぇ」
午後六時になって近所の高齢女性三人が席を立ち、沙耶と涼花は「ありがとうございました」と頭を下げた。三人がドアから出ていき、本日の営業はこれで終了だ。
「今日もお疲れさま、ありがとう」
涼花の声に、沙耶は「涼花さんもお疲れさまです」と声をかけて、赤いドアにかけられた〝OPEN〟の札をひっくり返して〝CLOSED〟にした。
「それじゃ、ちゃちゃっと明日の仕込みをしちゃおうか」
涼花が言ってテキパキと動き始めた。その姿は普段どおりで、昼休みの悲しげな様子は少しも感じられない。
だからといって、そんなにすぐに解決するような問題だったとも思えない。

