辣腕クールな脳外科医は、偽りの婚約者を甘く堕として妻にする

 プラチナでも病院でも見たことのないそんな表情に愛おしさを感じながら、沙耶は彼をマンションの中に案内した。
 匠真と両想いだったなんて、信じられないくらいに嬉しい。
 握り合った手から伝わる彼の体温が、沙耶の鼓動をどんどん速めていく。
 エレベーターはすぐに三階に着き、沙耶は一番奥にある1Kの部屋のドアを開けた。
「狭いですけど……どうぞ」
「お邪魔します」
 匠真が中に入り、沙耶は入ってすぐのキッチンにあるカウンターを手で示した。
「荷物、ありがとうございます。ここにお願いします」
 沙耶はコートを脱いで、白いニットとグレーのロングスカートになり、居室のハンガーラックにかけた。
「匠真さんのコートもかけますね」
 エコバッグを置いた匠真からコートを受け取った。彼はライトグレーのシャツにチャコールグレーのテーパードパンツという格好だ。
 匠真のコートをハンガーラックにかけた直後、腰に匠真の両手が回されてくるりと彼のほうに向けられた。
「沙耶」
 匠真が顔を傾けて近づけてくる。彼が長いまつげの目を伏せ、つられるように沙耶も目を閉じた。唇にそっと柔らかく温かな彼の唇が触れた。
「沙耶、好きだよ」
 そうささやく彼の声は熱を帯びてかすれていた。片手で沙耶の頬を愛おしむように撫でて、髪を梳くようにしながら後頭部に添える。
 直後、再び唇が重ねられた。今度はさっきよりも深く、熱く。
「あ……っ」
 唇を食まれ、舌先でなぞられて、腰の辺りがゾクンと震えた。沙耶は思わず彼のシャツの胸元をギュッと握る。
「沙耶、沙耶」
 彼女を呼ぶ彼の声には焦燥感がにじんでいた。
 唇を甘く貪られ、激しくなるキスに溺れそうになりながらも、沙耶は懸命に彼のキスに応える。
「ん……ふ……っ」
 いつの間にか口内に彼の舌が滑り込んで、舌を絡ませ合う濃密なキスを繰り返していた。
「はぁ……」
 とろけそうなキスに沙耶の全身から力が抜ける。その腰に手を当てて、匠真が沙耶を引き寄せた。
「沙耶?」