辣腕クールな脳外科医は、偽りの婚約者を甘く堕として妻にする

「本日のランチプレートは煮込みハンバーグです。パンかライスが選べて、温野菜のサラダがついてきます」
「じゃあ、それをライスで。それからホットコーヒーもお願いします」
「はい、ありがとうございます」
 沙耶は端末にオーダーを入力して、キッチンに向かった。
「煮込みハンバーグプレート、ライスでひとつです」
 沙耶の言葉に、涼花が「はーい、了解でーす」と答えた。
 沙耶はフライパンでソースを温め、あらかじめ焼き上げて少し煮込んでいたハンバーグを入れた。それをとろみがつくまで煮込めば、お客をあまり待たせることなく料理を提供できる。
 キッチンから店内に視線を送ったら、カウンター越しに匠真が窓の外を眺めている姿が見えた。物思いにふけっているようだ。
 日曜日は沙耶の誕生日だったから気を遣って彼が誘ってくれたが、父が退院した今、これからは彼がプラチナに来てくれるのを待つだけの日々になるだろう。
 このまま残りの二カ月半が過ぎて、彼との恋人関係が終わってしまうのだと考えると、寂しさが湧き上がってきた。
 ほどなくハンバーグがいい具合に仕上がったので、プレートに入れてソースをかけた。生クリームをたらしてパセリを散らせば、メインの完成だ。
 涼花がライスを盛って、コーヒーを準備してくれたので、沙耶はそれらと一緒にサラダと煮込みハンバーグを匠真のテーブルに運んだ。
「おまたせしました」
「ありがとう」
 カトラリーのケースを置きながら、沙耶は思い切って口を開く。
「あの、匠真さん、父がとてもお世話になりましたし、ステキな誕生日プレゼントをいただいたので、私からも匠真さんになにかプレゼントさせてください」
 断らないで、という思いを込めて沙耶がじっと見つめると、匠真はふわりと微笑んだ。
「ありがとう」
「よかったら、近々、匠真さんのお時間のある日に一緒にショッピングに行きませんか?」
 匠真は「うーん」と考えるような声を出して言う。
「ショッピングに行くよりも、沙耶の作ってくれた料理を家でゆっくり食べたい」
 匠真の返答を聞いて、沙耶は数回瞬きをした。
「えっと、私の料理はいつもプラチナで食べてくださってるじゃないですか。それじゃお礼になりません」
「プラチナではみんなのために作ってるだろう? そうじゃなく、俺のためだけに作ってほしい」
〝俺のためだけに〟という言葉に、頬が熱を持った。