辣腕クールな脳外科医は、偽りの婚約者を甘く堕として妻にする

(そっか、こういうお店って予約制なんだ)
 スタッフは沙耶に笑顔を向ける。
「こちらへどうぞ」
 沙耶が匠真を見たら、匠真は「行っておいで」と微笑んだ。
 沙耶はうなずいて、スタッフに続いて店の奥へと向かい、広いフィッティングルームに案内された。
「お好きなお色やデザインはございますか?」
 スタッフに訊かれて、沙耶は小声で答える。
「あの、黒とかチャコールグレーとか、暗めの色のをよく着ます……」
 省吾に言われるまでもなく、沙耶自身、顔立ちが地味だと思っていたし、ぽっちゃり気味なのが気になって、ダークカラーを選ぶことが多かった。
「少し冒険されてはいかがですか?」
「冒険ですか?」
 沙耶の言葉にスタッフはうなずく。
「はい。お肌のお色から、寒色系のパステルカラーがお似合いになると思いますよ」
 沙耶は目を丸くした。
「パ、パステルカラー、ですか!?」
「はい。少々お待ちいただけますか?」
 スタッフはフィッティングルームを出ていったが、少しして数着のドレスを持って戻ってきた。彼女が手にしているのは、ブルーグレーや淡いラベンダー、ベビーピンク、明るめのネイビーなどのドレスだ。
 今まで一度も選んだことのない色ばかりで、沙耶は思わず逃げ腰になった。けれど、スタッフはドレスをハンガーラックにかけて、そのうちの一着、ブルーグレーのドレスを手に取った。
「こうしてお肌に合わせてみると、よくおわかりになりますよ」
 スタッフは沙耶の体にドレスを当てた。彼女の言うとおり、鏡に映る沙耶の肌がブルーグレーに映えてきれいに見える。
「お顔が明るく見えますでしょう?」
「ほんと……ですね」
「ほかのものも当ててみましょうか」
 スタッフが見立ててくれたドレスは、彼女が言うとおり、どれも沙耶の肌に馴染んでいた。デザインも襟元がレースになっていたり、オフショルダーになっていたりと、上品で適度な華やかさがあるものばかりだ。
「気になるデザインはございますか?」
 スタッフに訊かれて、沙耶は最初に見せてくれたブルーグレーのドレスを選んだ。袖がレースになっている膝下丈のドレスだ。