沙耶はそろっと手を持ち上げて、匠真の前髪に触れた。その髪を撫でようとしたとき、彼の手に手を握られた。
「ひゃっ」
突然のことにびっくりして変な声が出た。匠真が目を開けて微笑む。
「驚かせた?」
「い、いえっ、私のほうこそ、起こしてしまってすみません」
「俺のほうこそ、沙耶の誕生日なのに、のんびりさせてもらった」
匠真はゆっくりと起き上がって伸びをした。膝から彼の温もりが消えて、沙耶の胸がキュッと切なく音を立てる。
そんな気持ちを紛らせようと、沙耶は展望台の向こうに視線を送った。
「紅葉が見頃で、とてもきれいですね」
「ああ。でも、穴場だから、あまり混んでないだろう?」
彼の言うとおり、三十台ほどしか駐まれないこぢんまりした駐車場だったが、車はその半分も駐まっていなかった。
「プラチナから車で十五分もかからないところに、こんなにステキな場所があったんですねぇ」
沙耶は眼下に目を凝らしたが、プラチナがどこにあるのかはわからなかった。けれど、伊吹会病院の大きくて白い建物は、ここからでも小さく見える。
「それじゃ、そろそろ行こうか」
匠真が言ってベンチから立ち上がった。
(そっか、きれいな景色を見せてもらったし、もうデートは終わりなんだ……)
そう思うと寂しさを覚えた。
「つかまって」
匠真がすっと手を差し出した。沙耶は寂しさ半分、ドキドキ半分で手を重ねて立ちあがる。
「ありがとうございます」
匠真が沙耶の手をギュッと握った。そのまま近くに駐まっている彼の車に向かって歩き、匠真が助手席のドアを開けてくれた。
「ありがとうございます」
沙耶は礼を言ってコートを脱ぎ、ゆったりした座席に腰を下ろした。匠真が運転席に回るのを見ながら、切なく息を吐く。
沙耶は父を安心させるため、匠真はお見合いを断るため、互いの利益のために偽恋人になっただけなのに、こんなステキな誕生日プレゼントをもらえた。
(もっと一緒にいたいなんて、ぜいたくなことを考えたらダメ。きちんとお礼を言って、笑顔でいなくちゃ)
匠真が運転席に乗り込んだので、沙耶は改めて礼を述べる。
「ひゃっ」
突然のことにびっくりして変な声が出た。匠真が目を開けて微笑む。
「驚かせた?」
「い、いえっ、私のほうこそ、起こしてしまってすみません」
「俺のほうこそ、沙耶の誕生日なのに、のんびりさせてもらった」
匠真はゆっくりと起き上がって伸びをした。膝から彼の温もりが消えて、沙耶の胸がキュッと切なく音を立てる。
そんな気持ちを紛らせようと、沙耶は展望台の向こうに視線を送った。
「紅葉が見頃で、とてもきれいですね」
「ああ。でも、穴場だから、あまり混んでないだろう?」
彼の言うとおり、三十台ほどしか駐まれないこぢんまりした駐車場だったが、車はその半分も駐まっていなかった。
「プラチナから車で十五分もかからないところに、こんなにステキな場所があったんですねぇ」
沙耶は眼下に目を凝らしたが、プラチナがどこにあるのかはわからなかった。けれど、伊吹会病院の大きくて白い建物は、ここからでも小さく見える。
「それじゃ、そろそろ行こうか」
匠真が言ってベンチから立ち上がった。
(そっか、きれいな景色を見せてもらったし、もうデートは終わりなんだ……)
そう思うと寂しさを覚えた。
「つかまって」
匠真がすっと手を差し出した。沙耶は寂しさ半分、ドキドキ半分で手を重ねて立ちあがる。
「ありがとうございます」
匠真が沙耶の手をギュッと握った。そのまま近くに駐まっている彼の車に向かって歩き、匠真が助手席のドアを開けてくれた。
「ありがとうございます」
沙耶は礼を言ってコートを脱ぎ、ゆったりした座席に腰を下ろした。匠真が運転席に回るのを見ながら、切なく息を吐く。
沙耶は父を安心させるため、匠真はお見合いを断るため、互いの利益のために偽恋人になっただけなのに、こんなステキな誕生日プレゼントをもらえた。
(もっと一緒にいたいなんて、ぜいたくなことを考えたらダメ。きちんとお礼を言って、笑顔でいなくちゃ)
匠真が運転席に乗り込んだので、沙耶は改めて礼を述べる。

