沙耶はそっと左手を匠真の手の中から引き抜いた。
「ありがとうございます。でも、いくら小早川さんが親切でも、そこまでしていただくのは申し訳ないですから」
沙耶の断りの言葉を聞いて、匠真はもどかしそうな仕草で前髪をくしゃりとかき上げた。しばらくそうしてから、手を下ろして沙耶に向き直る。
その表情はどことなく決意を秘めているように見えた。
「申し訳なく思わなくていい。実は俺の場合は両親が――特に母が――俺に見合いをさせようと躍起になっているんだ。だが、俺は好きでもない相手とは結婚したくない。だから、君が俺の恋人になってくれたら、俺も助かる」
「つまり……小早川さんにもメリットがあるから、恋人のふりをしてくださるということですか?」
匠真は静かにうなずいた。沙耶は両手をギュッと握って視線を落とす。
彼のようなステキな人が恋人だと知れば、きっと父は安心して回復に専念できるだろう。
けれど、その考えが本当は言い訳なのだと沙耶は自分で気づいていた。
本当は偽りの関係なのだとしても、彼の恋人になってみたい。この先、誰か別の女性が彼と並んで立つのを見るくらいなら、嘘でもいいから彼の一番近くにいたい。たとえ永遠にはそばにいられないとしても。
そう思ってしまったのだ。
沙耶はゆっくりと顔を上げて口を開く。
「ありがとうございます。ぜひお願いします」
「こちらこそ、よろしく」
匠真は小さく息を吐いて、ホッとしたような表情になった。
(本当にお困りなんだ……)
沙耶はためらいがちに口を動かす。
「それで、あの……期間はどうしましょうか?」
「期間?」
匠真が不思議そうに返した。
「はい。偽りの関係を、いつまでも続けるわけにはいきませんよね?」
匠真は少し考えるようにしてから答える。
「期間は君が望むまでで構わないよ」
「本当に……私が望むまででいいんですか?」
「ああ。俺は両親に、恋人がいると言えればそれでいいから」
「わかりました。じゃあ、期間は……」
沙耶は口をつぐんだ。本当は期間なんて決めずに、ずっと彼のそばにいたい。でも、彼にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
「ありがとうございます。でも、いくら小早川さんが親切でも、そこまでしていただくのは申し訳ないですから」
沙耶の断りの言葉を聞いて、匠真はもどかしそうな仕草で前髪をくしゃりとかき上げた。しばらくそうしてから、手を下ろして沙耶に向き直る。
その表情はどことなく決意を秘めているように見えた。
「申し訳なく思わなくていい。実は俺の場合は両親が――特に母が――俺に見合いをさせようと躍起になっているんだ。だが、俺は好きでもない相手とは結婚したくない。だから、君が俺の恋人になってくれたら、俺も助かる」
「つまり……小早川さんにもメリットがあるから、恋人のふりをしてくださるということですか?」
匠真は静かにうなずいた。沙耶は両手をギュッと握って視線を落とす。
彼のようなステキな人が恋人だと知れば、きっと父は安心して回復に専念できるだろう。
けれど、その考えが本当は言い訳なのだと沙耶は自分で気づいていた。
本当は偽りの関係なのだとしても、彼の恋人になってみたい。この先、誰か別の女性が彼と並んで立つのを見るくらいなら、嘘でもいいから彼の一番近くにいたい。たとえ永遠にはそばにいられないとしても。
そう思ってしまったのだ。
沙耶はゆっくりと顔を上げて口を開く。
「ありがとうございます。ぜひお願いします」
「こちらこそ、よろしく」
匠真は小さく息を吐いて、ホッとしたような表情になった。
(本当にお困りなんだ……)
沙耶はためらいがちに口を動かす。
「それで、あの……期間はどうしましょうか?」
「期間?」
匠真が不思議そうに返した。
「はい。偽りの関係を、いつまでも続けるわけにはいきませんよね?」
匠真は少し考えるようにしてから答える。
「期間は君が望むまでで構わないよ」
「本当に……私が望むまででいいんですか?」
「ああ。俺は両親に、恋人がいると言えればそれでいいから」
「わかりました。じゃあ、期間は……」
沙耶は口をつぐんだ。本当は期間なんて決めずに、ずっと彼のそばにいたい。でも、彼にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。

