【この前は沙耶がお見舞いに来てくれて嬉しかったよ。仕事中だったのに、ありがとう。またときどきでも、会いに来てくれると嬉しい】
それを読んだとたん、すっと頬の熱が引いた。
浮かれていた自分に罪悪感を覚える。
病気の父に望まれるまでもなく、沙耶自身、本当は父にもっと会いたいと思っていた。
(でも、また恋人の話が出たら、なんて答えたらいいか……)
手術が終わったばかりの父に、心配させてしまうようなことは言いたくない。
沈んだ気持ちでメイクを直してトイレを出た。エレベーターホールでは、匠真が壁にもたれて横の窓から夜景を見ていた。沙耶は笑顔を作って匠真に近づく。
「小早川さん、お待たせしました」
匠真はゆっくりと沙耶に顔を向けた。
「なにか心配事?」
「え?」
「深刻そうな表情で近づいてきたから」
匠真が視線で窓を示し、沙耶はあっと思った。沙耶が歩いてくる様子が窓ガラスに反射して映っていたのだろう。
「お父さんのこと?」
匠真が気遣わしげな表情になった。主治医の彼に、父の病状のことをまだ心配していると思われてはいけないので、沙耶は急いで答える。
「いえ、父の病気のことではないんです。実はさっき父からメッセージがあったんですけど……」
手術を終えたばかりの父を心配させたくないので、恋人に振られたことを言えてないのだと打ち明けた。
「そうか……」
匠真が真剣な表情で考え込んでしまったので、沙耶は明るい口調で言う。
「すみません、せっかくの楽しい気分が台無しですよね! 忘れてください。じゃ、帰りましょう!」
沙耶はエレベーターホールに歩きだそうとしたが、後ろから左手をギュッと握られた。驚いて振り返ったら、匠真がさらに驚くようなことを言う。
「俺と付き合おう」
沙耶はパチパチと瞬きをした。
「え……?」
「俺の恋人になってほしいんだ」
重ねて言われたその口調に聞き覚えがあって、沙耶は、ああ、と思った。
『俺の気分転換に付き合ってほしいんだ』と誘ってくれたときのように、沙耶のためを思って言ってくれているのだ。
それを読んだとたん、すっと頬の熱が引いた。
浮かれていた自分に罪悪感を覚える。
病気の父に望まれるまでもなく、沙耶自身、本当は父にもっと会いたいと思っていた。
(でも、また恋人の話が出たら、なんて答えたらいいか……)
手術が終わったばかりの父に、心配させてしまうようなことは言いたくない。
沈んだ気持ちでメイクを直してトイレを出た。エレベーターホールでは、匠真が壁にもたれて横の窓から夜景を見ていた。沙耶は笑顔を作って匠真に近づく。
「小早川さん、お待たせしました」
匠真はゆっくりと沙耶に顔を向けた。
「なにか心配事?」
「え?」
「深刻そうな表情で近づいてきたから」
匠真が視線で窓を示し、沙耶はあっと思った。沙耶が歩いてくる様子が窓ガラスに反射して映っていたのだろう。
「お父さんのこと?」
匠真が気遣わしげな表情になった。主治医の彼に、父の病状のことをまだ心配していると思われてはいけないので、沙耶は急いで答える。
「いえ、父の病気のことではないんです。実はさっき父からメッセージがあったんですけど……」
手術を終えたばかりの父を心配させたくないので、恋人に振られたことを言えてないのだと打ち明けた。
「そうか……」
匠真が真剣な表情で考え込んでしまったので、沙耶は明るい口調で言う。
「すみません、せっかくの楽しい気分が台無しですよね! 忘れてください。じゃ、帰りましょう!」
沙耶はエレベーターホールに歩きだそうとしたが、後ろから左手をギュッと握られた。驚いて振り返ったら、匠真がさらに驚くようなことを言う。
「俺と付き合おう」
沙耶はパチパチと瞬きをした。
「え……?」
「俺の恋人になってほしいんだ」
重ねて言われたその口調に聞き覚えがあって、沙耶は、ああ、と思った。
『俺の気分転換に付き合ってほしいんだ』と誘ってくれたときのように、沙耶のためを思って言ってくれているのだ。

