約束の日曜日。
(楽しみすぎて早く来すぎちゃった)
 沙耶は待ち合わせ場所である商業ビルのエントランスで、カチコチに固まったままソファに座っていた。高級ブランドショップが並ぶ通りにあるこのビルは、一階には国内外のブランドショップが、二階にはヘアメイクサロンやフォトスタジオが、三階から五階には高級レストランが入っていて、匠真が五階にある星付きのフレンチレストランを予約してくれたのである。
 ガラス張りの都会的な建物で、出入りする人たちも洗練されたファッションのおしゃれな人たちばかりだ。
(場違いに見えなかったらいいんだけど……)
 沙耶は落ち着かない気持ちで、腕にかけていた黒のウールのコートを膝の上に置きなおした。
 レストランのホームページを見たらドレスコードがあったので、友人の結婚式に着ていった一張羅のワンピースを着てきた。上品な光沢のあるネイビーのワンピースで、ウエストにアクセントで細いリボンが結ばれている。
 メイクは自分でがんばったものの、もともと自己主張の乏しいパーツをしているので、あまり華やかにはできなかった。
 心細くなりかけたとき、開いた自動ドアから匠真が入ってくるのが見えた。今日の彼はチャコールグレーのスーツに白いシャツ、ワインレッドのネクタイを合わせていて、大人っぽい彼によく似合っていた。
(わあ……こうして見ると、小早川さんって本当にイケメン)
 おまけに紳士的で気遣いができるのだから、涼花の言うようにモテるのも納得だ。
 つい見とれていたら、ロビーを見回した匠真が沙耶に気づいてふわりと笑顔になった。
「沙耶さん」
 沙耶はパッと立ち上がって匠真に近づいた。
「小早川さん、こんにちは」
「こんにちは。待たせてしまったかな?」
「いいえ、大丈夫です」
「本当?」
 匠真が沙耶の目を覗き込んだ。心まで見透かされそうなほどまっすぐ見つめられて、沙耶は小さく舌を出す。