(お父さんの顔色が悪かったのは、病気のせいだけなんだろうか。それともなにか苦労してることがあるのかな……)
母が亡くなった後、父は悲しみや寂しさを紛らせるように仕事に打ち込んでいた。思春期の娘をひとりで育てなければいけない大変さもあったかもしれないが、いつも余裕のない表情をしていた。それが、いつしか穏やかな顔を見せるようになった。それは妻を失った悲しみが癒えたからかと、沙耶は少し寂しく複雑な心境にもなったが……その頃に父は美咲を紹介されていたのだ。
美咲との出会いで、父は再び笑顔を取り戻した。沙耶自身、父には相談しにくいことを話せる相手ができたこと、自分には持てないだろうと思っていた妹ができたことを嬉しく思うようになっていた。けれど、病室で見た真緒の表情を思い出して、自然と肩が落ちる。
いつになったら真緒と打ち解けられるんだろう。
そもそも打ち解けられるんだろうか。
父の無事を確認できて安心した一方で、転職したことも省吾と別れたことも言えなかった。
ぐるぐる頭を悩ませていたら、涼花の声が聞こえてきた。
「沙耶ちゃんってば」
「は、はい?」
ハッとして顔を上げたら、涼花が顔を覗き込んでいた。
「ぼんやりしちゃって、大丈夫?」
「あ、ごめんなさい。なんですか?」
「混んでるから匠真くんと相席でもいい?」
「はい、もちろんです」
チラリと店内を見ると、いつの間にか満席になっていた。
「沙耶さん、お疲れさま」
匠真が沙耶の前の席に腰を下ろした。今の彼はダークグレーのパンツに白いシャツ、黒のジャケットという格好だ。
「小早川さんもお疲れさまです」
匠真は水と紙おしぼりを運んできたチエにランチを注文してから、沙耶に顔を向けた。
「ずっと考え込んでたけど、お父さんのこと、心配?」
「あ、はい」
考えていたのは父のことだけではなかったが、心配しているのは事実なのでそう答えた。
匠真は思いやりのこもった表情になる。
「そうだよな。君が来る前にご家族に詳しい説明をしておいたんだが、もし疑問に思うことがあれば、いつでも訊いてくれて構わないよ」
涼花の話を思い出して、沙耶は声を潜めて言う。
母が亡くなった後、父は悲しみや寂しさを紛らせるように仕事に打ち込んでいた。思春期の娘をひとりで育てなければいけない大変さもあったかもしれないが、いつも余裕のない表情をしていた。それが、いつしか穏やかな顔を見せるようになった。それは妻を失った悲しみが癒えたからかと、沙耶は少し寂しく複雑な心境にもなったが……その頃に父は美咲を紹介されていたのだ。
美咲との出会いで、父は再び笑顔を取り戻した。沙耶自身、父には相談しにくいことを話せる相手ができたこと、自分には持てないだろうと思っていた妹ができたことを嬉しく思うようになっていた。けれど、病室で見た真緒の表情を思い出して、自然と肩が落ちる。
いつになったら真緒と打ち解けられるんだろう。
そもそも打ち解けられるんだろうか。
父の無事を確認できて安心した一方で、転職したことも省吾と別れたことも言えなかった。
ぐるぐる頭を悩ませていたら、涼花の声が聞こえてきた。
「沙耶ちゃんってば」
「は、はい?」
ハッとして顔を上げたら、涼花が顔を覗き込んでいた。
「ぼんやりしちゃって、大丈夫?」
「あ、ごめんなさい。なんですか?」
「混んでるから匠真くんと相席でもいい?」
「はい、もちろんです」
チラリと店内を見ると、いつの間にか満席になっていた。
「沙耶さん、お疲れさま」
匠真が沙耶の前の席に腰を下ろした。今の彼はダークグレーのパンツに白いシャツ、黒のジャケットという格好だ。
「小早川さんもお疲れさまです」
匠真は水と紙おしぼりを運んできたチエにランチを注文してから、沙耶に顔を向けた。
「ずっと考え込んでたけど、お父さんのこと、心配?」
「あ、はい」
考えていたのは父のことだけではなかったが、心配しているのは事実なのでそう答えた。
匠真は思いやりのこもった表情になる。
「そうだよな。君が来る前にご家族に詳しい説明をしておいたんだが、もし疑問に思うことがあれば、いつでも訊いてくれて構わないよ」
涼花の話を思い出して、沙耶は声を潜めて言う。

