「お、さすが沙耶ちゃん。店長のお薦めをわかってるねぇ」
涼花がおどけた表情で言い、つられて沙耶も頬を緩めた。
「さあさあ、沙耶ちゃん、座って」
チエに促されて、沙耶は店の奥にあるふたり掛けの席に座った。
チエと涼花がキッチンに戻り、しんとした店内に食器が触れ合うかすかな音が響く。それが耳に心地いい。
しばらくして涼花がハーブティーの入ったカップを運んできた。
「おまちどおさま」
「ありがとうございます」
「まだお客さまはいないし、おしゃべりしちゃおうかな」
涼花は言って、沙耶の向かい側の椅子に腰を下ろした。
沙耶はカップを持ち上げて、ハーブティーを口に含む。すっきりした香りにホッとして、小さく息を吐いて涼花を見た。
「実は父の主治医は小早川さんだったんです。小早川さんがお医者さまだったなんて知りませんでした」
「匠真くんなら心強いね! 彼、すごく優秀だから。でも、みんなの前では〝先生〟って呼ばないであげてね。ランチくらいは、仕事を忘れてゆっくり食べさせてあげたいし」
涼花は人差し指を立てて、自分の唇にそっと当てた。沙耶は普段の匠真の様子を思い浮かべる。
彼はいつも隅の席に着いてひとりで食事をしている。いつも忙しそうで、食べおわればすぐに店を出ていくが、食事をしたりコーヒーを飲んだりしているときは、肩の力を抜いてリラックスしているようだった。
プラチナは病院から近いので、患者やその家族が来るのかもしれない。匠真のことだから、なにか訊かれたらきちんと答えるだろう。けれど、涼花の言うように、食事中くらいはのんびりしてほしいと思った。
「わかりました」
「それに、匠真くんってモテるしねぇ。あの外見だけでも人目を引くのに、ドクターって肩書きまで持ってるから、周りが放っとかないみたいで。本人はそういうの、迷惑してるみたいなんだけどね」
涼花は顔をしかめて言った。そのとき、軽やかなベルの音とともにドアが開く。
「沙耶ちゃんはゆっくりしていってね」
涼花は小声で言って、さっと立ち上がった。そのまま客を「いらっしゃいませ、こちらのお席へどうぞ」と案内する。
接客をする涼花の声をぼんやりと聞きながら、沙耶はカップを両手で包むように持った。ハーブティーをゆっくり飲んで、病院での様子を思い出す。
涼花がおどけた表情で言い、つられて沙耶も頬を緩めた。
「さあさあ、沙耶ちゃん、座って」
チエに促されて、沙耶は店の奥にあるふたり掛けの席に座った。
チエと涼花がキッチンに戻り、しんとした店内に食器が触れ合うかすかな音が響く。それが耳に心地いい。
しばらくして涼花がハーブティーの入ったカップを運んできた。
「おまちどおさま」
「ありがとうございます」
「まだお客さまはいないし、おしゃべりしちゃおうかな」
涼花は言って、沙耶の向かい側の椅子に腰を下ろした。
沙耶はカップを持ち上げて、ハーブティーを口に含む。すっきりした香りにホッとして、小さく息を吐いて涼花を見た。
「実は父の主治医は小早川さんだったんです。小早川さんがお医者さまだったなんて知りませんでした」
「匠真くんなら心強いね! 彼、すごく優秀だから。でも、みんなの前では〝先生〟って呼ばないであげてね。ランチくらいは、仕事を忘れてゆっくり食べさせてあげたいし」
涼花は人差し指を立てて、自分の唇にそっと当てた。沙耶は普段の匠真の様子を思い浮かべる。
彼はいつも隅の席に着いてひとりで食事をしている。いつも忙しそうで、食べおわればすぐに店を出ていくが、食事をしたりコーヒーを飲んだりしているときは、肩の力を抜いてリラックスしているようだった。
プラチナは病院から近いので、患者やその家族が来るのかもしれない。匠真のことだから、なにか訊かれたらきちんと答えるだろう。けれど、涼花の言うように、食事中くらいはのんびりしてほしいと思った。
「わかりました」
「それに、匠真くんってモテるしねぇ。あの外見だけでも人目を引くのに、ドクターって肩書きまで持ってるから、周りが放っとかないみたいで。本人はそういうの、迷惑してるみたいなんだけどね」
涼花は顔をしかめて言った。そのとき、軽やかなベルの音とともにドアが開く。
「沙耶ちゃんはゆっくりしていってね」
涼花は小声で言って、さっと立ち上がった。そのまま客を「いらっしゃいませ、こちらのお席へどうぞ」と案内する。
接客をする涼花の声をぼんやりと聞きながら、沙耶はカップを両手で包むように持った。ハーブティーをゆっくり飲んで、病院での様子を思い出す。

