父はベッドに横になったまま、沙耶に微笑みかけた。けれど、ゴールデンウィークに会ったときよりも顔色が悪く、その笑みは弱々しく見える。
「来てくれてありがとう」
それでも、沙耶を気遣うような父の声を聞いて、沙耶は体から空気が抜けるように息を吐き出した。肩がひどく凝っていて、自分がずっと緊張していたのだとわかった。
美咲が沙耶に近づいて、説明を始める。
「お父さんのろれつが回らなくなって、おかしいなって思って、急いで救急車を呼んだの。病院に着いたらすぐに手術してもらえて。脚の血管からカテーテルを挿入する脳血管内治療っていうのを受けたの。軽症で、後遺症の心配もないって先生に言われたのよ。症状の悪化や進行がなければ、三週間ほどで退院できるんですって」
「そんなに早く?」
沙耶の驚きの声に、美咲が笑みを返す。
「ええ。すぐに救急車を呼んだのと、すぐに手術をしてもらえたのがよかったみたい」
美咲の言葉を聞いて、沙耶も表情を緩めた。
「そうなんだ、ほんとによかった」
「バタバタしてたのと、心配かけたくないのとで、連絡が今日になってしまったの。本当にごめんなさいね」
沙耶は「いえ」と首を横に振って続ける。
「さっき出ていった人が主治医の先生?」
「そうなの。院長先生の息子さんで、アメリカ帰りの優秀な脳外科の先生なんですって。本当に心強いわ」
(小早川さんがそんなすごい人だったなんて……)
これからはプラチナでも小早川先生と呼んだほうがいいのだろうか、と沙耶が思っていたら、父が声を発した。
「沙耶、仕事中に来てくれたのかい?」
「あ、うん」
「すまなかったね」
「気にしないで。こうしてお父さんが大丈夫なんだってわかって、私も嬉しいし」
沙耶の言葉に、父は頬を緩めた。
「沙耶も元気そうでよかったよ。ひとり暮らしで困ったことはないかい?」
「うん、大丈夫だよ。大学生のときからだから、ひとり暮らしにも慣れてるし」
「さすが、沙耶はお姉さんだな。しっかり者で助かる。同じ会社にお付き合いしている人もいるんだったね。沙耶をそばで支えてくれる人がいて安心だ」
「あー……」
今はそうではないと言いかけて、言葉をのみ込んだ。手術を終えたばかりの父に、会社が倒産したことや恋人と別れたことを打ち明けて、心配をかけたくない。
「来てくれてありがとう」
それでも、沙耶を気遣うような父の声を聞いて、沙耶は体から空気が抜けるように息を吐き出した。肩がひどく凝っていて、自分がずっと緊張していたのだとわかった。
美咲が沙耶に近づいて、説明を始める。
「お父さんのろれつが回らなくなって、おかしいなって思って、急いで救急車を呼んだの。病院に着いたらすぐに手術してもらえて。脚の血管からカテーテルを挿入する脳血管内治療っていうのを受けたの。軽症で、後遺症の心配もないって先生に言われたのよ。症状の悪化や進行がなければ、三週間ほどで退院できるんですって」
「そんなに早く?」
沙耶の驚きの声に、美咲が笑みを返す。
「ええ。すぐに救急車を呼んだのと、すぐに手術をしてもらえたのがよかったみたい」
美咲の言葉を聞いて、沙耶も表情を緩めた。
「そうなんだ、ほんとによかった」
「バタバタしてたのと、心配かけたくないのとで、連絡が今日になってしまったの。本当にごめんなさいね」
沙耶は「いえ」と首を横に振って続ける。
「さっき出ていった人が主治医の先生?」
「そうなの。院長先生の息子さんで、アメリカ帰りの優秀な脳外科の先生なんですって。本当に心強いわ」
(小早川さんがそんなすごい人だったなんて……)
これからはプラチナでも小早川先生と呼んだほうがいいのだろうか、と沙耶が思っていたら、父が声を発した。
「沙耶、仕事中に来てくれたのかい?」
「あ、うん」
「すまなかったね」
「気にしないで。こうしてお父さんが大丈夫なんだってわかって、私も嬉しいし」
沙耶の言葉に、父は頬を緩めた。
「沙耶も元気そうでよかったよ。ひとり暮らしで困ったことはないかい?」
「うん、大丈夫だよ。大学生のときからだから、ひとり暮らしにも慣れてるし」
「さすが、沙耶はお姉さんだな。しっかり者で助かる。同じ会社にお付き合いしている人もいるんだったね。沙耶をそばで支えてくれる人がいて安心だ」
「あー……」
今はそうではないと言いかけて、言葉をのみ込んだ。手術を終えたばかりの父に、会社が倒産したことや恋人と別れたことを打ち明けて、心配をかけたくない。

