「沙耶ちゃん、顔色悪いよ、どうしたの!?」
「あの、ち、父が、手術して。昨日、脳梗塞で」
沙耶が細切れに言葉を発し、涼花は落ち着かせるように沙耶の両肩に手を置いた。
「お父さんが昨日、手術をしたのね? 容態はどうなの?」
「は、母は大丈夫だと」
沙耶は涼花にスマホの画面を向けた。
「見てもいい?」
涼花に訊かれて沙耶はうなずいた。メッセージに目を通した涼花は、沙耶の手にスマホを握らせて言う。
「お母さんが大丈夫って言ってるから、大丈夫だと思うよ。お父さん、伊吹会総合病院に入院してるんだね。今日は休んでいいから、お父さんのお見舞いに行っておいで。伊吹会はここからすぐだから」
画面を見た沙耶は、美咲から返事が届いていたことに気づいた。
涼花が落ち着いた口調で続ける。
「伊吹会はね、ここから駅前に向かって、駅を通り過ぎた最初の角を右に曲がるの」
「で、でも、涼花さん、おひとりじゃ」
「大丈夫。チエさんはいつも早めに来てくれるし、ロールキャベツは昨日、沙耶ちゃんが煮込んで仕上げてくれてるから、こっちのことは気にしないで。ほら、一度深呼吸して」
涼花に言われて、沙耶は大きく息を吸って吐き出した。ほんの少しだけ気持ちが落ち着き、肩の力を抜く。
「ありがとうございます。それじゃ、そうさせてもらいます」
沙耶はエプロンを外してコートを羽織った。
「落ち着いて、気をつけて行くのよ」
姉のように優しく声をかけられて、沙耶は小さくうなずいた。
「はい、ありがとうございます」
涼花がドアを開けてくれたので、もう一度礼を言って店を出た。明るい日差しに目を細め、涼花が教えてくれた道順をたどる。
角を曲がるにつれて、前方に五階建ての白い大きな建物が見えてきた。白地に緑色で、伊吹会総合病院という文字と診療科が書かれた看板が視界に入る。
こんな大きな病院に来たのは、母が最期を迎えたとき以来だ。
それを思い出すと、再び不安が沸き上がってきた。すくみそうになる足を叱咤して、白壁の建物に入る。初めての病院で勝手がわからず中を見回していたら、案内係の女性に「初診ですか?」と声をかけられた。
「いえ、あの、父が脳梗塞の手術を受けて入院しているんですが……」
「でしたら、あちらへどうぞ」
「あの、ち、父が、手術して。昨日、脳梗塞で」
沙耶が細切れに言葉を発し、涼花は落ち着かせるように沙耶の両肩に手を置いた。
「お父さんが昨日、手術をしたのね? 容態はどうなの?」
「は、母は大丈夫だと」
沙耶は涼花にスマホの画面を向けた。
「見てもいい?」
涼花に訊かれて沙耶はうなずいた。メッセージに目を通した涼花は、沙耶の手にスマホを握らせて言う。
「お母さんが大丈夫って言ってるから、大丈夫だと思うよ。お父さん、伊吹会総合病院に入院してるんだね。今日は休んでいいから、お父さんのお見舞いに行っておいで。伊吹会はここからすぐだから」
画面を見た沙耶は、美咲から返事が届いていたことに気づいた。
涼花が落ち着いた口調で続ける。
「伊吹会はね、ここから駅前に向かって、駅を通り過ぎた最初の角を右に曲がるの」
「で、でも、涼花さん、おひとりじゃ」
「大丈夫。チエさんはいつも早めに来てくれるし、ロールキャベツは昨日、沙耶ちゃんが煮込んで仕上げてくれてるから、こっちのことは気にしないで。ほら、一度深呼吸して」
涼花に言われて、沙耶は大きく息を吸って吐き出した。ほんの少しだけ気持ちが落ち着き、肩の力を抜く。
「ありがとうございます。それじゃ、そうさせてもらいます」
沙耶はエプロンを外してコートを羽織った。
「落ち着いて、気をつけて行くのよ」
姉のように優しく声をかけられて、沙耶は小さくうなずいた。
「はい、ありがとうございます」
涼花がドアを開けてくれたので、もう一度礼を言って店を出た。明るい日差しに目を細め、涼花が教えてくれた道順をたどる。
角を曲がるにつれて、前方に五階建ての白い大きな建物が見えてきた。白地に緑色で、伊吹会総合病院という文字と診療科が書かれた看板が視界に入る。
こんな大きな病院に来たのは、母が最期を迎えたとき以来だ。
それを思い出すと、再び不安が沸き上がってきた。すくみそうになる足を叱咤して、白壁の建物に入る。初めての病院で勝手がわからず中を見回していたら、案内係の女性に「初診ですか?」と声をかけられた。
「いえ、あの、父が脳梗塞の手術を受けて入院しているんですが……」
「でしたら、あちらへどうぞ」

