辣腕クールな脳外科医は、偽りの婚約者を甘く堕として妻にする

 次々に言葉を紡ぐ彼女は、張りのある頬が紅潮して、丸い目がキラキラと輝いていた。
 匠真は目を細めて沙耶に尋ねる。
「俺のために新メニューを考えてくれてるの?」
「はい!」
 沙耶は元気よく返事をしたものの、直後、顔を真っ赤にして、もごもごと口の中で答える。
「あ、あの、小早川さんみたいにクリームが苦手な方に喜んでもらえたらって、思ったんです……」
 匠真に媚びようとして言ったわけではなく、純粋に同じように甘いものが好きではない客に向けて、スイーツを考えようとしていただけなのだろう。
「本当に料理が好きなんだな」
「はい。あの、リクエストがあったら、ぜひお聞かせくださいね」
「ありがとう。思いついたらぜひ相談するよ」
「いつでもどうぞ。それじゃ、失礼します」
 照れた笑みを浮かべてぺこりとお辞儀をした彼女は、また愛らしい動きで店内に戻っていった。

 それから数日後にプラチナは三周年を迎えた。初日は病院を離れられなかったので行けなかったが、事前に花を注文して届けてもらっていた。
 ちょうど三周年から三日目に当たる金曜日の今日、ランチを食べにプラチナに行くと、店の前に鉢植えの胡蝶蘭や花かごが飾られていた。匠真が注文した、ピンクのバラを中心とした豪華な花かごもある。どれにも〝祝三周年〟と書かれたカードが立てられていた。
 ドアを開けたら、店内の雰囲気が普段と違って驚いた。女性陣全員が、黒い膝下丈のワンピースにフリルのついた白いエプロンをつけて、白いレースのカチューシャをしていたのだ。どう見てもメイドの格好だ。
 ノリはといえば、映画で見るような執事の衣装を身にまとっている。
「ご主人さま、おかえりなさいませ」
 客を迎える言葉もいつもと違う。
「三周年記念で、三日間限定、メイドコスプレでお出迎えしま~す」
 涼花の明るい声を聞きながら、匠真は視線を沙耶に移した。
 沙耶はコスプレが慣れないのか、少し気恥しそうな表情だ。袖が膨らんでいて、裾がふんわり広がるワンピースが、清楚な彼女によく似合っている。いつもより赤く艶やかな唇、ほんのり染まった丸い頬、潤んだ大きな目が――。
「かわいいでしょう?」
 涼花が言って、その場でくるりと回ってみせた。