海に面したオーシャンビュースイートのバルコニーから、海に沈む秋の夕日が見える。空は茜色にもバラ色にも見える幻想的な色に染まり、空を映す水面で光が穏やかに揺れている。
今日は結婚記念日で、ふたりでこの部屋に泊まりに来ている。この部屋は一年半前、匠真がプロポーズしてくれた思い出の場所でもある。
『沙耶、愛してる。これからの人生、ずっと沙耶のそばにいたい。沙耶にそばにいてほしい。あのときの約束を永遠のものにしよう』
シャドーストライプのスリーピースを着た匠真が、おもむろに片膝をつき、ベルベットの小箱のふたを開けた。大粒のダイヤモンドを抱いたエンゲージリングが、美しく輝いていたことを昨日のことのように思い出す。
沙耶はバルコニーのデッキチェアに横になったまま、左手に視線を移した。今日は優美なデザインのマリッジリングと一緒に、あのときもらったエンゲージリングを重ねづけしている。
「沙耶、少し風があるが、寒くないか?」
匠真の声がして、彼がバルコニーに顔を覗かせた。沙耶は振り返って彼を見る。
「うん、気持ちいいよ。もうすぐ日が沈んじゃうから、匠真さんも一緒に見よう」
沙耶はバルコニーの手すりの向こうに視線を戻した。もう少ししたら夕日がすべて沈んで、またダイヤモンドのようになった光のかけらが見えるかもしれない。
後ろのほうから匠真が歩いてくる気配がした。てっきり隣のデッキチェアに座るものだと思っていたのに、彼は沙耶の足元で片膝をついた。
「匠真さん?」
不思議に思って顔を向けたら、彼は背中に隠していた手を前に回した。それと同時に大きな赤いバラの花束が現れて、沙耶は目を見開く。
「沙耶、俺と結婚してくれてありがとう」
「私こそ! 匠真さんと結婚できてとても幸せだよ」
沙耶が上体を起こそうとすると、匠真が腰を支えるように左手を添えた。
「ありがとう」
沙耶はふっくらしたお腹を気遣いながら体を起こした。妊娠十七週、五カ月の半ばに入ったお腹は、ワンピースの上からでもわかるようになった。
「沙耶がそばにいてくれて幸せだ」
「私もだよ」
今日は結婚記念日で、ふたりでこの部屋に泊まりに来ている。この部屋は一年半前、匠真がプロポーズしてくれた思い出の場所でもある。
『沙耶、愛してる。これからの人生、ずっと沙耶のそばにいたい。沙耶にそばにいてほしい。あのときの約束を永遠のものにしよう』
シャドーストライプのスリーピースを着た匠真が、おもむろに片膝をつき、ベルベットの小箱のふたを開けた。大粒のダイヤモンドを抱いたエンゲージリングが、美しく輝いていたことを昨日のことのように思い出す。
沙耶はバルコニーのデッキチェアに横になったまま、左手に視線を移した。今日は優美なデザインのマリッジリングと一緒に、あのときもらったエンゲージリングを重ねづけしている。
「沙耶、少し風があるが、寒くないか?」
匠真の声がして、彼がバルコニーに顔を覗かせた。沙耶は振り返って彼を見る。
「うん、気持ちいいよ。もうすぐ日が沈んじゃうから、匠真さんも一緒に見よう」
沙耶はバルコニーの手すりの向こうに視線を戻した。もう少ししたら夕日がすべて沈んで、またダイヤモンドのようになった光のかけらが見えるかもしれない。
後ろのほうから匠真が歩いてくる気配がした。てっきり隣のデッキチェアに座るものだと思っていたのに、彼は沙耶の足元で片膝をついた。
「匠真さん?」
不思議に思って顔を向けたら、彼は背中に隠していた手を前に回した。それと同時に大きな赤いバラの花束が現れて、沙耶は目を見開く。
「沙耶、俺と結婚してくれてありがとう」
「私こそ! 匠真さんと結婚できてとても幸せだよ」
沙耶が上体を起こそうとすると、匠真が腰を支えるように左手を添えた。
「ありがとう」
沙耶はふっくらしたお腹を気遣いながら体を起こした。妊娠十七週、五カ月の半ばに入ったお腹は、ワンピースの上からでもわかるようになった。
「沙耶がそばにいてくれて幸せだ」
「私もだよ」

