辣腕クールな脳外科医は、偽りの婚約者を甘く堕として妻にする

 言いながら、匠真は片方の口角を上げていたずらっぽい笑みを浮かべる。
「えっ!?」
「いいよね?」
 匠真が沙耶の耳元に唇を寄せた。沙耶はこれ以上ないくらい大きく目を見開く。
「それとも、沙耶は俺にキスをするのは嫌?」
 匠真がすねたような表情になり、沙耶は頬を染めながら口の中でもごもごと声を発する。
「い、嫌なわけないです」
「やっぱり寂しい」
 匠真が体を起こしたので、沙耶は両手を伸ばして匠真の首に絡めた。
「さ、寂しがらないでください。じゃなくて、寂しがらないでっ」
「じゃあ、いっぱいキスして」
 少しかすれた甘い声で言われて、沙耶はドキドキしながら彼に顔を寄せる。腰に匠真の手が回されて彼のほうにぐっと引き寄せられ、彼の柔らかな唇にキスをした。
 直後、後頭部に彼の手が回されて、口づけが深くなる。
「んっ」
 会えなかった時間を埋めるように唇を重ねる。
 本当の想いを伝えられたこと。
 彼がありのままの沙耶を受け入れてくれたこと。
 それが嬉しくて、ただただ彼が愛おしくて、彼の髪に指を差し入れ、唇を貪り、貪られる。
「沙耶」
「匠真さん……っ」
 どれくらいそうしていたか、すっかり身も心もとろけてしまって、沙耶は匠真の胸にくたりと寄りかかった。
「沙耶、これからも寂しい思いをさせるときがあるかもしれない。それでも、俺は沙耶と一緒にいたい」
「うん」
「本当にずっとだ」
 匠真が念を押すように言い、沙耶はチラリと目線を上げた。
「私だって、レシピを考えるのに夢中になって、匠真さんに寂しい思いをさせることがあるかもしれないよ。それでもいい?」
「沙耶が好きなことに誇りを持って笑顔でいてくれること。それが俺の望みだ」
「私も同じだよ。匠真さんが信念を貫いて誇りを持っていてくれること。それを願ってる」
「ありがとう」
 匠真の低く温かな声と一緒に髪にキスが落とされた。沙耶はどうしようもなく幸せな気持ちで、彼の胸に頬をこすりつけた。