あまりにも率直な求婚に息を飲んだ。

 王位継承第一位の彼女に求婚できる男はいない。彼女から求婚されなければ、結婚はできないのだ。その求婚を、彼女はあっさりとコナンにした。

「なぜそんな」

 慌てて一歩後退すると、足元にあった石に躓き尻もちをついてしまう。
 あまりにもかっこ悪くて情けなく、思わず唇をかみしめた。

(ちがう、そうじゃない。そうじゃないんだ)

「コナン?」

 立つのを手伝おうと右手を伸ばしたエミリアの手を引くと、彼女があっさりコナンの胸に飛び込んでくる。

「なぜ僕なんですか?」

 思いのほか小さな彼女の体に、少しだけ落ち着きを取り戻す。でも同時に彼女の甘い香りに頭がくらくらした。

「なぜ? だって私は、小さいころからあなたにしか求婚してないよ」
「えっ?」

 思いもしないことを言われエミリアの顔をのぞき込むと、彼女は不思議そうにコナンを見返した。

「覚えていないの?」
「すみません」

 猛烈な罪悪感に襲われたが、エミリアはそんなコナンに「そうか」と、小さく微笑んで見せた。

「初めて会った時、コナンが馬に乗って走って見せてくれたでしょう」

 そう言われ、過去に思いを巡らす。確かにそんなことがあった。

「すごく素敵で、お嫁さんにしてと言ったら、乗馬もできない子はダメだって言ったじゃないか」

(言ったかもしれない)