再びリビングの扉を開けたのは、二十分後のこと。白翔は元々座っていた奥のソファーに腰を落ち着けていた。肩身の狭い雰囲気で畏まり、扉を開けた音と共にピクリと顔を持ち上げる。
「お待ちどおさま」
笑顔で言う祖母に、白翔の隣りに行くよう促され、深緋は彼に近付いた。
不安そうな顔で深緋を見上げ、しかしながらそこで首を傾げる。先ほどと服装の変わった深緋を訝しんでいるのだ。
「遅くなってごめんね」
白翔の隣りに座り、いつもならあり得ない優しい笑みを浮かべた。白翔が安堵の息をついた。
「なんで着替えてんの?」
「うん? ん〜……、ちょっとね?」
吐血で汚れたから、とはとてもじゃないが言えない。
「ところでキミ、名前なんていったかな?」
深緋たちの真向かいに祖母が座り、急に白翔の表情が引き締まる。両膝に手を置き、背筋がピンと伸びた。
「あの、大路 白翔です」
「そう、ハクトね。……あ、アタシの事はお姉さんでも良いけど。極力“リリーさん”と呼ぶように」
「……え。あ、ハイ」
まるでどこかの面接を受けている雰囲気のなか、スグルくんがそれぞれにお茶を出してくれる。深緋はお決まりのトマトジュースだ。
グラスに口をつけながら事の次第を見守っていると、祖母が再び口を開いた。
「それじゃあ本題に入るけど。ハクトは深緋のことが好きなのよね? それとも遊び?」



