吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 深緋はさりげなく口元に手を当てた。うっかり吸血欲に駆られた自分を取り繕った。そうだね、と抑揚のない声で応える。

「キミの提案も悪くないんだけど。直接私が降りて抱き上げた方が早いと思う」
「え、でもそれだと警戒して逃げられるんじゃ……?」

 躊躇する間もなく、ヒョイと側溝に降りると、白翔が声を詰まらせた。

 猫はピクリと耳を立て、慌てて立ち上がった。しかしながら、その場から逃げようとはしない。それどころか、鼻をピクピクと震わせて深緋の匂いを嗅ぎに来る。

 深緋がその場に屈み、「おいで」と手を差し伸べると、猫はすんなりとその手に(からだ)を預けた。

 ポカンと口を開けたまま、白翔が「マジで?」と呟いた。抱き上げた猫を白翔に渡して、側溝から出ると彼は目を点にして言った。

「朝比奈ってすげぇな、何者?」

 問いに対して曖昧に小首を傾げるだけで、「吸血鬼だけど」と正体を明かすには至らない。

 制服のところどころについた(ちり)(ほこり)を手で払い退けていると、助けた猫がモゾモゾと動き出し、白翔の手から離れた。「ミャー」と鳴き声をあげて深緋の足へと躰を擦り付けてくる。仕方なく、再度深緋が抱き上げた。

「多分この子、野良だね。とりあえず先生たちに相談しよっか?」