**
掃除の時間、教室から運んだゴミを捨てた帰りのことだった。
「朝比奈っ」と慣れ親しんだような声の出し方で、同じクラスの大路 白翔が言った。
「なぁ、朝比奈って猫好き?」
言いながら、どこか焦ったような表情で白翔が手招きしている。特別親しいわけでもなければ、これまでに話したこともない。それなのに、早く早く、と言わんばかりに深緋を急かした。
いきなり何、と不快に思うのも束の間で、彼が注意を向けている地面を見て、合点がいった。
白翔の視線は、幅広で深さ五十センチ以上もある側溝に据えられており、その中で痩せぎすの茶トラの猫が、力なく座り込んでいた。成猫とはまだ呼べないぐらいの大きさだ。時おり、か細い声で、ミャーミャーと鳴き、深緋たちを見上げている。
落ち葉や枯れ枝、泥などのゴミが多少溜まってはいるが、水は流れていないようだ。
「ついさっき見つけてさ、蓋を開けたんだけど……。俺が助けようと手を入れたら警戒して逃げちゃって」
側溝の猫から深緋に目をやり、白翔がハァ、とため息をついた。
「猫だからこれぐらいの高さは跳べるかなと思って見てたんだけど、それも出来ないみたいでさ」
どうしたものかと困り果てていたところへ、偶然通りかかったのが深緋だと言う。
「俺、思ったんだけどさ。そのゴミ箱を下ろして、中に入ったところを引き上げればいいんじゃね?」
同意を求める彼の瞳が爛々としていて、ごくりと喉が鳴る。嬉々とした異性の血は、とりわけ美味しいのだ。
掃除の時間、教室から運んだゴミを捨てた帰りのことだった。
「朝比奈っ」と慣れ親しんだような声の出し方で、同じクラスの大路 白翔が言った。
「なぁ、朝比奈って猫好き?」
言いながら、どこか焦ったような表情で白翔が手招きしている。特別親しいわけでもなければ、これまでに話したこともない。それなのに、早く早く、と言わんばかりに深緋を急かした。
いきなり何、と不快に思うのも束の間で、彼が注意を向けている地面を見て、合点がいった。
白翔の視線は、幅広で深さ五十センチ以上もある側溝に据えられており、その中で痩せぎすの茶トラの猫が、力なく座り込んでいた。成猫とはまだ呼べないぐらいの大きさだ。時おり、か細い声で、ミャーミャーと鳴き、深緋たちを見上げている。
落ち葉や枯れ枝、泥などのゴミが多少溜まってはいるが、水は流れていないようだ。
「ついさっき見つけてさ、蓋を開けたんだけど……。俺が助けようと手を入れたら警戒して逃げちゃって」
側溝の猫から深緋に目をやり、白翔がハァ、とため息をついた。
「猫だからこれぐらいの高さは跳べるかなと思って見てたんだけど、それも出来ないみたいでさ」
どうしたものかと困り果てていたところへ、偶然通りかかったのが深緋だと言う。
「俺、思ったんだけどさ。そのゴミ箱を下ろして、中に入ったところを引き上げればいいんじゃね?」
同意を求める彼の瞳が爛々としていて、ごくりと喉が鳴る。嬉々とした異性の血は、とりわけ美味しいのだ。



