吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 (よわい)十六、七の彼は深緋から見ればかわいい坊やに違いない。歳を重ねるたびに数えるのが面倒になってきたが、深緋は今年で五十六歳になる。

 人間の年齢でいうところの、中年やおばさんで括られるが、女吸血鬼のなかではまだまだ若輩者(ひよっこ)だ。

 ホームに滑り込んだ通学電車に乗り込み、白翔の真後ろで扉が閉まる。

 毎朝のことながら、満員状態にうんざりとなる。湿気と人間の体温で車内の温度は相当上がっているはずだ。まだ六月だというのに、今年はやけに暑い気がする。きたる七月、八月が今から憂鬱でならない。深緋は平たいため息をこぼした。

 走り出しの電車が重厚な音を響かせ、ガタン、と一度大きく揺れた。油断していたせいか、慣れていたはずの揺れに足元がふらついた。

「おっと!」

 他の乗客にぶつからないように、白翔が肩を支えてくれる。

「ありがとう。白翔」
「おう」
「さすがは男の子だね」

 深緋より三十センチほど背の高い彼は、やや唇を尖らせながら、どこか不服そうに眉をしかめた。

「前から思ってたけど。深緋って……時々俺のこと子供扱いするよな?」
「そうかな」

 まぁ、五十六歳だからね。内心でつぶやき、かすかな笑みをもらす。

 白翔とこうも自然に話すようになったきっかけを挙げるとしたら、あの日、焼却炉のそばで猫を助けたからだ。