吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

「おはよう、白翔」

 白翔は同じクラスの男子で、偶然にも深緋の家の三軒向こうに住んでいる。バスケ部のエースで、やたらと人当たりのいい男子だ。

 他人とは一定の距離をおき、深く関わらないをモットーにしている深緋でさえ、話ぐらいはしてもいいかと思わされる。

 深緋が高校生を演じる(・・・)のは、これで十回目だ。一度目は高校卒業後、とある企業へ就職もしているので社会人生活も経験したのだが。外見の若さを理由に、学生生活を繰り返すようになった。十六歳から二十歳(はたち)までの四年間を、一度目も含めて九回繰り返し、都度、引っ越しも兼ねてきた。

 高校生を繰り返す生き方には、女吸血鬼特有の、『年齢ロジック』が関係している。

 一年一年、年老いていき、寿命と呼ばれる年齢に達してから死を迎えるのが人間だが、女吸血鬼は生まれてから成長し、ある程度の年齢、『上限姿(じょうげんし)』と呼ばれる歳に差しかかると、条件次第で老いるスピードがかわる。

 ようは異性の血を飲んでいるかどうかで見た目が変化する、という訳だ。

 深緋の上限姿は十七歳なので、吸血さえ怠らなければ、いつまでも女子高生でいられる。

 そしてこれ以上大人っぽくなりたければ、日に一回の吸血を我慢するより他はない。断食(それ)だけで十歳、老いることができる。

 白翔と等間隔をあけて歩きながら日傘をしまい、ホームへの階段を昇った。親しいクラスメイトさながら会話はするのだが、話題を振ってくるのはたいてい白翔だ。

 部活動のバスケ部で、夏のインターハイは予選落ちしたけれど、近々他校で練習試合があるとか、夏休みには合宿があるといった彼自身の話を色々としてくれるので、深緋は聞き役に徹して、いつも「うんうん」と相手をする。