吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 床に置いたままの絵本を持ち上げ、最後のページを(めく)った。


 ——《人間になれた女の子は、血を吸いたいという食欲を手放し、大好きな男の子と永遠に結ばれたのです。》


 色鉛筆で描いた、女の子と男の子が手を繋いでいるイラストを、指のはらで撫でた。

 今でも時々思い出す。あの頃毎日飲んでいた白翔の血の味を。

 甘くて口の中でとろけるようで、他では味わうことの出来ない逸品だった。

 人間として生まれ変わった深緋は、二度とハニーブラッドを口にはできないけれど。

 愛する人の血を引く、愛しい我が子がそばにいる。そしてまた、新たに生まれる命もーー。

 膨らんだお腹に手を当てたとき。胸中でずっと大切にしていた言葉が、ふと脳裡へと浮かんだ。


 ——「やがては子を産んで母親となって、守り守られながら生きていくんだ。
 深緋にはそういう幸せが待ってるだろう?」


 うん。手に入れたよ、リリーさん。


「りりちゃん、寝た?」

 カチャ、と音がして洋室の扉から白翔が顔を覗かせた。