吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 ジャケットの繊維が背中の傷に触れてズキ、と痛む。苦痛から顔をしかめる深緋を支えるように、白翔が腕を回して椅子から立ち上がらせてくれる。逃げるぞ、と彼が口パクで言った。それに無言で頷いた。

 一瞬、下着の裏に意識が向くけれど、今はこの場から立ち去るのが先決だ。

 納屋の戸を静かに押し開けて、先に白翔が外の様子を窺う。周辺に織田がいない事を確かめて、行こうと彼が合図を出した。彼の介助を得て外に出た。長時間同じ姿勢でいた事と織田にやられた傷で、何度も足元がふらついた。

 深緋がその場で転けないよう、白翔が力強い腕で支えてくれる。よく見れば彼も深緋同様に靴を履いていなかった。極力足音を立てないように靴下のみで歩いていたのだろう。

 遠方でガン、と音が聞こえた。肩先がびくんと跳ねる。

 思わず白翔を見上げた。不意に、織田は? と尋ねたくなった。自分を助けに現れた白翔がここにいるのに、織田はいったい何に気を取られているのか。それが単純に気になった。

 再び、ガン、と乾いた音がした。続いて空気を切り裂くような音を立てて何かが飛んでくる。

「…ぅぐッ!!」

 一本の黒い矢が白翔の肩に突き刺さった。深緋を支えていた方の肩が下がり、白翔と共に体勢をくずした。

「白翔っ!!」