吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 肌を撫でる冷気にぶるりと身が震える。季節は十月半ば。山道を歩くためにある程度の防寒はしていたが、汗の引いた体はすっかり冷えきっていた。

 昼下がりに見た、織田の外見を思い出す。彼があの頃の若さを維持していたのはなんとなく理解できた。かつて深緋の血を三度飲んだことから、老いのバランスが狂い、中途半端にでも不老を手に入れたのだ。

 立ちすくんだままで、きょろきょろと首を振る。再度周りの様子を確認して嘆息がもれた。悪趣味だと思ってしまう。たとえ織田が現れなかったとしても、個人的には絶対にこのような人気(ひとけ)のない、荒廃した場所には近づかない。心霊スポットだと言われれば真っ先に信じてしまう、不気味な場所だ。

 手に握りしめたスマホを開き、再三時刻を確認する。23:42。二十分の遅刻はいくらなんでも遅すぎた。

 白翔の実家でちゃんとりり子が眠れているかどうかも気になるし、やっぱりもうそろそろ引き返そうか。そう思ったとき。手の中のスマホがブルブルと震え出した。

 画面を確認しようとしたところで異変に気がつく。

 すぐそばでジャリ、と音が聞こえた。靴底が地面を擦るような音だ。突如現れた人の気配に慌ててそちらへ振り返った。

「深緋ちゃん、ありがとう」