吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

「……やっぱり。そうですよね」

 膝の上でぎゅっと握ったこぶしにため息が落ちる。足に力を入れて立ちあがろうとしたところで「待て」と呼び止められる。

 切長の瞳に真剣な色を浮かべる紫月さんと目が合った。

 *

 ちらちらと車内のデジタル時計を確認しながら、車を走らせた。約束の二十三時を回り、現地に着くころには二十分もオーバーしていた。

 側道に車を停める。外に出るとひやりとした風が頬を撫でた。

 現地を少しだけ歩き立ち止まる。辺りを見渡した。既に廃墟と化した団地の前で、スマホのライト片手に辺りを見渡している。

 月明かりのおかげで夜目がきくといっても、それだけでは頼りないほど人通りのない寂れた土地だ。着いてから五分が経過する。

 今のところ織田の姿は見られない。約束の時間に間に合わなかったから、諦めて先に帰ったのかもしれない。だとしたら、また別の日にコンタクトを取ってくるだろう。そう思うものの、すぐには引き返せなかった。

 何せ相手はあの織田なのだ。トリッキーで捉えどころがなく、表面上では何を考えているのかわからない殺人鬼。次が普通のやり方で訪れるとは考えにくい。せめてあと十分待って現れなければ帰ろう。

 スマホを持つ手とは別に、深緋はコートのポケットの中で小型のスタンガンを握りしめた。ここへ来るまでに買っておいた護身用の武器だ。