吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 鬼気迫る深緋の様子に圧倒され、門番の女性は「いいだろう」と二つ返事で了承してくれた。「合言葉は」と確認されて、ひと息に言い切る。音を立ててゆっくりと門が上がった。

 谷の様子は特に変わった様子もなく、吸血鬼でいたかつての自分を彷彿とさせた。

 そこここに建つ古民家から家の明かりが漏れ、暗くなった夜空を見上げる。まだ低い場所に位置しているが、丸い月が存在感を知らしめるようにまばゆい光を放っている。

 そろそろ六時半だ。急がなければいけない。すぐ目の前に平屋建ての木造家屋が見えた。紫月さんの側近のひとりである女性と目が合い、互いに会釈を交わした。

 村本館の玄関に靴を並べた。女性に付いて廊下を歩き、板張りの引き戸から厳然(げんぜん)の間へ入室する。

 あの頃と同じように、一段上の、敷居の高い場所に紫月さんが座っていた。今夜の外見は三十代だ。スッと右手を差し出し、深緋に座るよう促す。

「久しいな、ミアカ。此処へは二度と立ち入るなと約束させたはずだが、そうも言っていられぬ事態に遭遇したか?」

「はい」と頷き、急遽立ち入った無礼を謝罪する。

「門番のスズネから聞いた。此処へ入電したそうだな」
「はい。ですが繋がらなかったので」
「番号を変えた。ただそれだけだ」
「……そうですか」