吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 そう伝えたあと、「くれぐれも白翔には知らせないでください」と重ねて頼みこんだ。親からしたら、息子である夫に隠れて“浮気する嫁”を連想させたかもしれない。はしたない、ふしだらだ、と思わせる言動を充分にしていたと思う。

 けれど、義母(はは)はなにも聞かずに深緋の要望を受け入れてくれた。切羽詰まった深緋の表情から余程の事情があるのだろうと察し、「迎えの連絡は何時になっても構わないから」と言って背中を押してくれた。

 大切なりり子を急遽、義両親に預けてまで行かなければいけないところがあった。ハンドルを握る手に力がこもる。

 白翔と結婚してから必要に応じて取得した運転免許証。二台あるうちの一台の自家用車は自分用に購入したものだ。平日の買い物やりり子を病院に連れて行くのに普段から乗り回している。深緋はすいすいと目的地に向かって車を走らせた。

 奥多摩駅周辺の駐車場に車を停めると、過去の記憶を頼りに山道を歩き進めた。既に時刻は午後四時半に差し掛かろうとしている。懐中電灯で足元を照らしながらパキパキと砕ける枯れ葉や木を、スニーカーの裏で踏み鳴らした。多少の疲れを感じても決して足を止めなかった。

「すみません! 誰かいませんか……!?」