「——あ。深緋ちゃん、気が付いたみたい」

 そわそわと落ち着かない心拍をひた隠しに、深緋はソファーで横になる白翔に近付いた。

「大丈夫?」と言って上から彼の瞳を覗き込めば、白翔はびくんと肩を震わせ、あんぐりと口を開けた。僅かに上体を起こした格好で深緋を凝視している。

「え、み、深緋?? つぅか、ここ……、どこ?」

 左右に首を振り動かし、白翔は部屋の様子を確認する。手前のローテーブルや黒い薄型テレビ、天井や廊下へ続く扉へと視線を彷徨わせている。

「私の家だよ」

 平静を装い、いつもの口調で告げると、え、と目を丸くし、白翔は微かに頬を赤らめた。

「なんで??」

 なんでと言われても。

 深緋は無言で目を逸らし、「倒れてたから」と説明にならない説明をする。

 白翔が首を捻るのはもっともで、そばでお茶を用意しているスグルくんが端的にフォローした。

「僕が見つけたんですよ。コンビニに行く道で、深緋ちゃんと同じ学校の生徒さんが倒れていたから、そのまま連れて帰って来て」

 烏龍茶のグラスを手前に置かれて、白翔がたじろぎつつも会釈をする。

「あの。深緋のお兄さん、ですか?」

 年齢的なもので言えば、スグルくんは二十代前半だ。彼はいつもの人懐っこい笑みを浮かべるだけで、それ以上は何も言わない。

「あ。お姉ちゃん(・・・・・)の、彼氏なの」
「え。……って前に一度だけ見た、あの美人で気さくな?」
「そう」