園外保育で大きな公園へ遊びに行った際、風で飛ばされた帽子を他所のお兄ちゃんに拾ってもらったのだと聞いていた。
「あっ、りり子!」
うっかり娘に手を離されて慌てる。かっこいいお兄ちゃんとやらに、駆け寄るりり子は普段から人懐っこく、危ういほどに無鉄砲だ。
走り寄ったりり子に気付き、若い男性がスマホから娘に目を移す。りり子の目線に合わせてかがみ、「こんにちは」と挨拶している。子供好きな人なのかなと、ホッと安堵するのも束の間。
すみません、と言って浮かべようとした笑みが、表情の途中で不自然に消えた。深緋はまばたきも忘れて彼を見る。頬が引きつった。
「久しぶりだね、深緋ちゃん?」
こちらに向けて挨拶をし、彼が立ち上がる。十二年前と変わらぬ容姿で美しい笑みを浮かべている。
織田 将吾があの日のままの容貌で、深緋を見ていた。
知らず、唇が震えた。急いでりり子の手を取り、守るように引き寄せた。
「やだなぁ。昔の旧友に、挨拶もなし?」
「……だれが」
あんたなんか友達じゃない、という否定の言葉は、喉の奥で強張り、出てこない。
「まさかこの再会が偶然だと思ってる?」
ふふん、と得意そうに笑い、織田が肩に掛けたボディバッグの中から一通の白い封筒を取り出した。
差し出されたそれを見て、ああ、と呻くように息を吐き出し、目を閉じた。
「キミたちを探すの、ものすごく苦労したんだよ?」
「あっ、りり子!」
うっかり娘に手を離されて慌てる。かっこいいお兄ちゃんとやらに、駆け寄るりり子は普段から人懐っこく、危ういほどに無鉄砲だ。
走り寄ったりり子に気付き、若い男性がスマホから娘に目を移す。りり子の目線に合わせてかがみ、「こんにちは」と挨拶している。子供好きな人なのかなと、ホッと安堵するのも束の間。
すみません、と言って浮かべようとした笑みが、表情の途中で不自然に消えた。深緋はまばたきも忘れて彼を見る。頬が引きつった。
「久しぶりだね、深緋ちゃん?」
こちらに向けて挨拶をし、彼が立ち上がる。十二年前と変わらぬ容姿で美しい笑みを浮かべている。
織田 将吾があの日のままの容貌で、深緋を見ていた。
知らず、唇が震えた。急いでりり子の手を取り、守るように引き寄せた。
「やだなぁ。昔の旧友に、挨拶もなし?」
「……だれが」
あんたなんか友達じゃない、という否定の言葉は、喉の奥で強張り、出てこない。
「まさかこの再会が偶然だと思ってる?」
ふふん、と得意そうに笑い、織田が肩に掛けたボディバッグの中から一通の白い封筒を取り出した。
差し出されたそれを見て、ああ、と呻くように息を吐き出し、目を閉じた。
「キミたちを探すの、ものすごく苦労したんだよ?」



