吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

「最後に。シヅキさんのフルネームを伺ってもいいですか?」

 シヅキさんは、ん、と眉を寄せボソッと呟いた。

(ゆずりは) 紫月(しづき)だ」

 ミハネさんにどんな漢字を書くのかも教えて貰った。深緋は両手を手前について深々と頭を下げた。

「楪 紫月さん。この度は大変お世話になり、誠にありがとうございました。どうか……、お元気で」

 伏せた顔を上げて笑みを浮かべると、彼女も稀に見せる笑顔で穏やかに言った。

「ミアカもな」

 その後、側近の彼女たちと門番の女性に見送られながら、白翔と共に門を潜った。鉄柵が閉まるのを見届け、二人で深々と一礼を残す。

 本来なら、織田も一緒に門を出るはずだったので、思い出すと憂鬱が頭をもたげた。昨夜ひとりで下山した織田は今どうしているのか。今後関わることがあったらどうしよう、と形のはっきりしない不安に襲われる。

 喜びと寂しさと、少しの恐怖を胸に、深緋は踵を返して白翔と一緒に山を下りた。

 *

「おう、朝比奈。また大路の見学か?」

 翌週の土曜日。午前中だけ部活のある白翔に付いて、深緋も学校へ行った。

 ニスで艶めく床をオレンジ色のボールが弾む。練習の邪魔にならない場所に腰を下ろし、すぐ側に立つバスケ部顧問、岡本大貴を見上げた。

「家にいても暇なので」
「うーん? 友達と遊んだりはしないのか?」
「しないですね、今のところ」
「そうか」