「あの。つかぬことをお伺いしますが、その先代の神威さんは、今もこの谷にいらっしゃるのでしょうか?」
そう尋ねたところで、カムイさん、もといシヅキさんが、重苦しく息を吐き出した。「いいや」と返事が返ってくる。
「先代の神威は人知れず谷から消えてな。今も消息がわかっていないのだ」
「……消えた?」
一体どうして、と不躾にも尋ねたくなる。「なんでですか?」とそれまで黙って聞いていた白翔が口を挟んだ。
「うむ」と少し考え、シヅキさんが腕を組んだ。そばで控える彼女らに目配せし、話すべきか否かの合図を送っている。彼女たちが浅く頷き返した。
「そうだな。ハクトの血を吸血したことと言い、昨夜ヤヒロとヨスガが亡くなったことと言い……おまえたちを女人谷の内輪揉めに巻き込んで、随分と迷惑を掛けたからな。まぁ、良いだろう」
そう言ってシヅキさんは、数回首肯した。
「谷の内情を明かすようで情け無いのだが、今でも派閥争いが絶えぬのだ。この谷は遥か昔より真楼一族と楪一族の両姓から成り立っていて、事ある毎に衝突している」
「……ま、ろう」
そう言われてふと思い出した。昨夜、ヨスガさんが亡くなる前にもその言葉を聞いたはずだ。
そう尋ねたところで、カムイさん、もといシヅキさんが、重苦しく息を吐き出した。「いいや」と返事が返ってくる。
「先代の神威は人知れず谷から消えてな。今も消息がわかっていないのだ」
「……消えた?」
一体どうして、と不躾にも尋ねたくなる。「なんでですか?」とそれまで黙って聞いていた白翔が口を挟んだ。
「うむ」と少し考え、シヅキさんが腕を組んだ。そばで控える彼女らに目配せし、話すべきか否かの合図を送っている。彼女たちが浅く頷き返した。
「そうだな。ハクトの血を吸血したことと言い、昨夜ヤヒロとヨスガが亡くなったことと言い……おまえたちを女人谷の内輪揉めに巻き込んで、随分と迷惑を掛けたからな。まぁ、良いだろう」
そう言ってシヅキさんは、数回首肯した。
「谷の内情を明かすようで情け無いのだが、今でも派閥争いが絶えぬのだ。この谷は遥か昔より真楼一族と楪一族の両姓から成り立っていて、事ある毎に衝突している」
「……ま、ろう」
そう言われてふと思い出した。昨夜、ヨスガさんが亡くなる前にもその言葉を聞いたはずだ。



