「二つに、もはや同族ではなくなったゆえ、合言葉を保持していても、此処への入村は認められない」
「……はい」
今日を最後に、カムイさんに会えなくなるというのは寂しかったが、これも仕方のないことだ。
女人谷の女性たちはここでの暮らしを守るために、村の存在を公にしていない。公にしないことでリスクを避けて存続し、深緋のような伝承の吸血鬼に、儀式を施しているのだ。
続けてカムイさんは右手の指の、三本目を立てた。
「三つに、合言葉を紙やインターネット上に書き記すことを禁ずる。これらを守れるか?」
「はい。守ります、必ず」
そう言ったあとで、首から提げたロケットペンダントが胸元でシャラ、と揺れる。
不意に写真の裏に書かれた合言葉の存在を思い出した。後ろ暗い気持ちになる。母が遺した形見の写真だが、黙って持ち去るのは何処か間違っているような気がした。
「あの」と声を掛け、深緋は写真の存在をカムイさんに打ち明けた。初めて谷へ来たときには、合言葉を口頭で聞かされたと嘘をついたが、本当は写真の裏に書いてあったのだと正直に話した。
彼女は別段、怒るでも驚くでもなく、「そうか」とだけ言って頷いた。
「……はい」
今日を最後に、カムイさんに会えなくなるというのは寂しかったが、これも仕方のないことだ。
女人谷の女性たちはここでの暮らしを守るために、村の存在を公にしていない。公にしないことでリスクを避けて存続し、深緋のような伝承の吸血鬼に、儀式を施しているのだ。
続けてカムイさんは右手の指の、三本目を立てた。
「三つに、合言葉を紙やインターネット上に書き記すことを禁ずる。これらを守れるか?」
「はい。守ります、必ず」
そう言ったあとで、首から提げたロケットペンダントが胸元でシャラ、と揺れる。
不意に写真の裏に書かれた合言葉の存在を思い出した。後ろ暗い気持ちになる。母が遺した形見の写真だが、黙って持ち去るのは何処か間違っているような気がした。
「あの」と声を掛け、深緋は写真の存在をカムイさんに打ち明けた。初めて谷へ来たときには、合言葉を口頭で聞かされたと嘘をついたが、本当は写真の裏に書いてあったのだと正直に話した。
彼女は別段、怒るでも驚くでもなく、「そうか」とだけ言って頷いた。



