荷物を持ち、そのまま部屋を出た。女性に付いて廊下を歩くと、もう何度も通された板の間へ案内される。ここが厳然の間、というわけだ。

 上座を見ると、紺色の袴姿でカムイさんが座っていた。そばで控えるミハネさんとユンナさん同様に、外見は変わらず三十代で、タイムリミットは訪れていないと察する。

「おはようございます」

 入ってすぐに一礼し、用意された座布団に白翔と並んで腰を下ろした。

「気分はどうだ? 少しは眠れたか?」
「あ、はい。暫くは興奮して眠れなかったのですが。明け方、気付いたら眠っていて」
「そうか」
「あの、対価のお支払いを今しても?」

「そうだな」と頷き、カムイさんがユンナさんに目配せする。深緋はバックの中から、あらかじめ封筒に入れて準備していたお金を手渡した。

 白翔がその様子をまじまじと見ながら、「幾らしたの?」と耳打ちする。金銭のことなので、曖昧に笑い誤魔化した。

「朝からおまえたちを呼び付けたのは他でもない。人間に生まれ変わったミアカに、そして人間のハクトに。二、三約束して貰いたいことがあるのだ」

 約束、と呟き、カムイさんを真摯に見つめる。

「一つに、我ら同族以外に、この村の存在を口外してはならない」

 言いながらカムイさんは右手の人差し指を立てた。「はい」と返事をする。