翌朝、ノックの音で目を覚ました。ベッドに横たえていた体を慌てて起こし、返事をする。ドアノブを掴んで開けると、カムイさんの側近であるミハネさんが、にこりと笑みを浮かべて立っていた。外見は変わらず、三十代だ。
「おはようございます。昨夜はお眠りになられましたか?」
「……はい。少しだけ」
「そうですか。これより厳然の間へ参りますのでご支度願えますか?」
「わかりました。あの。今、起きたばかりなので、五分だけ待って貰っても?」
「構いません」
申し訳程度に会釈し、一度扉を閉める。
白翔はまだ眠っているようで、時おりスゥスゥと寝息が聞こえる。ソファーで膝を曲げて横になる彼へ近寄り、思わず顔が綻んだ。こんな姿を見ると起こすのが可哀想に思えてくる。
寝顔、可愛いな。
「白翔、……白翔」
「……んー」
優しく肩を揺り起こし、何度か声を掛けるとぼんやりとした眠気まなこが深緋を捉えた。
「おはよう。迎えの人が来てるから部屋を出るよ?」
白翔はパチリパチリと瞬きし、目を擦った。
「ん、わかった」
窓の外が白み出す時間までは起きていたはずだが、いつの間にか眠っていたようだ。壁掛け時計で今の時間を確認すると、八時を数分過ぎていた。



