吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 カムイさんに付いて歩き、村本館より東に進む。木々が生い茂り、鬱蒼とした場所にある階段を上がる。奥まった場所に神社の本殿を想起させる古い建物が鎮座していた。

 カムイさんは一度立ち止まって一礼し、入口らしき扉へ足を向ける。扉は一部が損壊し、ぽっかりと口を開けていた。そのすぐそばに座した人影が見えた。

「ヨスガ……!」

 駆け寄るカムイさんに続き、深緋と白翔も慌ててそばに寄る。ヨスガと呼ばれた女性は建物の壁に背を預け、既に虫の息だった。カムイさんが跪《ひざまず》き、ヨスガさんの腹部を両手で押さえる。周囲には(おびただ)しい血が流れていた。

「シ、ズキ、さま……っ」
「良い、喋るな。その代わり回復したらたっぷりと灸を据えてやる。今ヘリを」

 女性は首を横に振り、「ドラキュラ、が」と言葉をついだ。

「ヤヒロが、言った……ドラキュラ封じを、聞いて。ほ、本……を」
「中からドラキュラに関する書物を持って逃げたのだな?」

 ヨスガさんは、微かに顎を引き、途切れ途切れに謝罪を口にする。そして目の淵から一粒の涙を溢した。

「あなたは、優し、すぎます……いずれ、マロウ、一族……が」
「もう良い、喋るな!」

 ヨスガさんは中途半端に目を開けたまま、そこで動きを止めた。その唇から再び息を吐くこともなく、暗い瞳は虚空を映している。器から彼女の意思が消えたのは明白だった。