吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

「へぇ。これはまた随分と美味しそうな色男じゃないか。入りたければ合言葉を言いな?」
「……合言葉。深緋ちゃん、合言葉だって?」

 獲物を見る目付きにも動じず、振り返った織田は首を傾げる。

「“月夜に猫、谷に女帝”」

 三度目も同じ言葉を言って、門番の女性が妖しく笑う。ギィイ、と金属が軋む音を立て、柵がゆっくりと上がった。

「あの、合言葉を持って入村しますので、同伴者には手を出さないで下さい」

 女性を見据え、きっぱりと告げると三度とも同じように「良いだろう」と返される。

「今夜儀式を受けに来たアサヒナ ミアカだね? 紫月(しづき)様からちゃんと聞いてるよ」

 シヅキ様。だれのことだろう?

「村本館への道は分かるね? 直接出向くといい」
「……わかりました」

 一礼をしてから門を潜り、若干視界が開ける。白翔の手を引いて進もうと振り返るが。彼は持参した十字架をちょうど首からぶら下げたところで、深緋は手を引っ込めた。

 夜の谷を奥へと進む。後ろに続く織田はキョロキョロと周りの様子を窺いながら後を付いて来る。

 この集落に入る前までは、山々の木々に覆われ、丸い月も時折でしか確認できなかった。しかし、門から中はなにも遮る物がなく、月光が満遍なく降り注いでいる。

 内側からエネルギーが生まれて、体中を(みなぎ)り、ひときわ軽くなる。深緋と同様に、織田の表情も生き生きしていた。