視界の下半分に大きな水溜まりができる。瞬きの拍子に熱くなった雫がこぼれ落ち、後から後から涙となって頬を伝った。グスッと洟をすすると、海に似たしょっぱい味がする。
リリーさんは母親じゃないってわかってるけど。私にとってはずっと親だった。
幼児期はもちろん、小学生の頃もママだと信じて生きてきた。彼女の手紙にあったように、深緋がママと呼ぶと、祖母はいつも困ったように笑い、「ママじゃないよ、リリーさんだよ」と決まり文句のように言った。
“リリーさん”は自慢のママだった。
毎回ではないけれど、小学生の授業参観に来てくれた彼女を見て、周りの子たちはみんな口を揃えて言った。
『みあかちゃんのママ、すっごいキレ〜!』
そう言われるのが嬉しくて、誇らしかった。
十七を過ぎた頃。急に自分の外見が十歳老けて、吸血鬼としての成熟年齢、つまり上限姿が高校生ぐらいだと知ったときも、彼女は仕事を休んで「これからは毎日吸血しなければいけないよ」と教えてくれた。
二十歳を迎えたとき、彼女が実は母親ではなく祖母だと知らされた。
正直なところ、あのときの衝撃は今でもはっきりと覚えている。悲しいのか辛いのか、よく分からない感情が心の中で渦を巻き、深緋は言葉にすることができなかった。数日、祖母を避けてしまった。
リリーさんは母親じゃないってわかってるけど。私にとってはずっと親だった。
幼児期はもちろん、小学生の頃もママだと信じて生きてきた。彼女の手紙にあったように、深緋がママと呼ぶと、祖母はいつも困ったように笑い、「ママじゃないよ、リリーさんだよ」と決まり文句のように言った。
“リリーさん”は自慢のママだった。
毎回ではないけれど、小学生の授業参観に来てくれた彼女を見て、周りの子たちはみんな口を揃えて言った。
『みあかちゃんのママ、すっごいキレ〜!』
そう言われるのが嬉しくて、誇らしかった。
十七を過ぎた頃。急に自分の外見が十歳老けて、吸血鬼としての成熟年齢、つまり上限姿が高校生ぐらいだと知ったときも、彼女は仕事を休んで「これからは毎日吸血しなければいけないよ」と教えてくれた。
二十歳を迎えたとき、彼女が実は母親ではなく祖母だと知らされた。
正直なところ、あのときの衝撃は今でもはっきりと覚えている。悲しいのか辛いのか、よく分からない感情が心の中で渦を巻き、深緋は言葉にすることができなかった。数日、祖母を避けてしまった。



