吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 目の前の角を右に曲がり、十字路の先にあるコンビニを目指すことにした。家から一番近い場所だ。タイムリミットまで二十分を切っているので、悠長なことはしていられない。

 深緋と同様にコンビニに向かって歩く、若い女性の後ろ姿が見えた。

 夢中で走っていると、不意に誰かとぶつかった。

 ただ真っ直ぐに前しか見ていなかったせいか、右手前方から飛び出してくる人影に全く気付かなかった。よろけて尻餅をつく。

「すみません、大丈夫ですか?」

 見知らぬ男性の声が耳に心地良いトーンで響いた。顔を上げて、あっ、と息をのんだ。

 転んだ深緋を心配し、手を差し伸べていたのは、今朝見たばかりの『電車の君』だった。

 まさに棚からぼた餅、ひょうたんから駒で、内心で小躍りをする。

「だ、大丈夫……です」

 深緋はしなやかな彼の手を取り、立ち上がった。お尻の砂埃を払いながら、どうにかしてこの男とお近付きにならなければ、と頭をフル回転させる。

 名前と連絡先が分かれば良いのだが、今日のところは時間がない。近所の、人通りの少ないところまで引き連れて、とにかく吸血だけを済ませようと考えた。

「あの」

 怯えた口調と上目遣いを敢えて演出し、深緋は甘いマスクの彼に近付いた。

「さっき。変な人にあとをつけられていて、実はとても困っていたの」
「え……」

 彼は二重の瞳を瞬き、キョトンとする。