すでに家政夫のスグルくんがお酒のケースを受け取っていて、ボールペンでサインをした所だった。玄関の三和土で伝票を受け取る配達員は、あろうことか女性だ。
ショックを隠せず、「なんで」と呟いていた。
「なんでも、いつものお兄さんが熱を出したから代わりの人が来たらしいよ?」
スグルくんは、彼特有の人懐こい笑みで何でもないふうに言う。
「あらら。あてが外れたねぇ」
他人事のように言う祖母をひと睨みしてから、スニーカーに足を突っ込んだ。
「アタシは仕事に出るからね〜、早めに帰って来るんだよ〜」
毎夜、キャバクラで働く祖母に「分かった」と返事をして、後ろ手で玄関扉を閉めた。
こうなったら仕方がない。今日のところはだれでもいいから、手っ取り早く男を探すことにしよう。飲食店でゴミ出しに出る店員とか、外掃除をするコンビニのお兄さんとか、だれでもいい。
そう考えたところで一瞬、通り魔という単語が浮かんで、まさに今の自分こそがそれであろうと苦笑した。
ふと、足の裏から働く浮力を感じて、深緋は天を仰いだ。濃紺に変わり果てた空を月明かりが照らしている。口元が緩んだ。そうだ、そろそろ満月が近い。
ショックを隠せず、「なんで」と呟いていた。
「なんでも、いつものお兄さんが熱を出したから代わりの人が来たらしいよ?」
スグルくんは、彼特有の人懐こい笑みで何でもないふうに言う。
「あらら。あてが外れたねぇ」
他人事のように言う祖母をひと睨みしてから、スニーカーに足を突っ込んだ。
「アタシは仕事に出るからね〜、早めに帰って来るんだよ〜」
毎夜、キャバクラで働く祖母に「分かった」と返事をして、後ろ手で玄関扉を閉めた。
こうなったら仕方がない。今日のところはだれでもいいから、手っ取り早く男を探すことにしよう。飲食店でゴミ出しに出る店員とか、外掃除をするコンビニのお兄さんとか、だれでもいい。
そう考えたところで一瞬、通り魔という単語が浮かんで、まさに今の自分こそがそれであろうと苦笑した。
ふと、足の裏から働く浮力を感じて、深緋は天を仰いだ。濃紺に変わり果てた空を月明かりが照らしている。口元が緩んだ。そうだ、そろそろ満月が近い。



