吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

「そ。十七のときかなぁ……とにかく親が(ろく)でもなくてさ。生活費とかままならなくて、高校も通えなくなったから。家を出たんだ」

 急に自分の表情が凝り固まった。スグルくんは、なんでもないことのように、穏やかな口調で述べている。

 彼にとってはたった五、六年前のことだろうに。遠い目をして淡々と辛い日々を語ってくれた。

 スグルくんの父親は十年ほど前に他所(よそ)に愛人を作って離婚しており、母子家庭で、それこそ生活保護を受けなければやっていけない環境で育ったらしい。

 なのに母親はいつしか精神に異常をきたすようになり、昼間からアルコールを摂る生活が染み付いていたと言う。

 生活苦でまともに学校へも通えなくなり、彼は全財産を手に家を飛び出したそうだ。

「全財産って言っても、たかが知れてるんだけどね。最初の一週間はネカフェとかで寝泊りしてたんだけど、なんせ貧乏だからさ。そのうち公園で寝るようになって」
「……そう、なんだ」

 それで家なき子だったわけか……。

「そういうホームレスの生活をしていたときにね。夜の歓楽街でリリーさんを見つけたんだ。毎晩綺麗なドレスを着ている彼女は、僕とは別世界の住人で……すごく眩しかった」

 スグルくんはフッと目を細めて笑い、物憂い吐息をついた。