吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 ザッと背中から引き抜いたアイスピックに舌を這わせて、織田は恍惚とした笑みを浮かべていた。

 狂ってるとしか思えない。吸血鬼でもないのに、わざわざ他人(ひと)の血が付いた凶器を舐める……なんて……。


 舐める(・・・)……?


 そこでハッとなる。突如、暗い脳裏にフラッシュを焚いたような光源を感じて、深緋は目を開けた。

「っあ」

 苦悩の表情から一転、思わず呟いていた。

「深緋?」

 白翔が心配そうな面持ちでこちらを見ているが、深緋は再度左手前方へ視線を飛ばしていた。織田は手にスマホを持ち、画面に集中している。

 どうして気付かなかったんだろう。もしかして、織田 将吾は今……?

 真っ暗闇に、一筋の光が差し込んだ。もはや絶望に近い状態だったのに、奇跡が降って湧いたようだ。

「深緋、大丈夫か?」

 白翔は深緋の視界を遮り、パタパタと手を振った。「大丈夫」とぎこちなく笑い、ようやく白翔を見上げる。

 本当は腹の底から叫び出したかった。打ち震える喜びで、平静を装うのが難しい。

 織田はあの夜、確かに深緋の血を舐めた。村長(むらおさ)であるカムイさんの話によると、一滴でも血を飲めばひと月でドラキュラになるらしい。刺されたのはもうひと月半も前だ。

 私の記憶が正しければ、今まさに織田はドラキュラになっているはず……。

 ともすればにやけそうな顔を、全力で引き締めた。