吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 あれ以来全く見なくなったから、逮捕の可能性を願っていたけれど。やはり捕まっていなかったわけだ。ハァ、と重いため息がもれた。

 外見の良さから吸血相手に決めたあの日の夜、織田に背中を刺された記憶がまざまざと蘇った。

 なんで連続殺人犯が捕まらずに、平気な顔して電車になんか乗ってるの? 深緋はわけもなく憤りを感じていた。

 あの夜、刺されたことに激怒して血を吸ったから、織田は刺したこと自体を覚えていない。

 深緋は相手に気付かれないよう、視線を彼の周辺に漂わせた。織田は一人だった。仕事帰りなのか、初めて会ったときと同様に仕立ての良いスーツを着ている。

 ルックスは相変わらずの美しさで、そばに立つ女性二人が織田をチラチラ見ながら、なにか囁き合っている。

 モデルか芸能人並みの容貌だが、だれひとりあの男が殺人鬼だとは思わないだろう。

 織田は殺人という不届きな所業から足を洗ったのだろうか。それともまだ姑息に続けていて、だれかを狙っているのか。三人目の遺体が報道されたニュース以降、メディアからはなんの(しら)せも入らない。

 考え出したら止まらず、瞑目したまま思いを凝らしていた。

 あの日。吸血のために間合いに入った自分も悪いのだが、背中にいきなり凶器を突き立てられたときの、あの表情が忘れられない。二度刺された感触と痛み、織田の爽やかすぎる笑顔。