吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 朝、家の前で待ち合わせて電車に乗り、いざ館内に入ると、深緋は童心に返って心を躍らせた。初めて目にするそのはしゃぎように、白翔は水槽そっちのけで深緋の顔ばかり見ていた。

 夏休みの最中(さなか)なので、まわりは家族連れやカップルで賑わっていた。イルカやアシカのショーでは二人分の席を探すのに、幾らか歩き回るほど混雑していた。

 昼食を館内にあるカフェで食べて、白翔のスマホで一緒に写真を撮った。初めてだれかと写るスナップ写真は、どこか不思議な感覚がして気恥ずかしくなる。

 昼下がりに吸血の時間を迎えたため、持参した水筒から血を飲んだ。今朝、採血をさせてもらった血液だ。白翔と過ごす時間は楽しく、あっという間に帰る時間を迎えた。

 駅のホームから暮れなずむ空を見つめていると、すっかり忘れていた悩みがまた頭の中に舞い戻ってくる。気怠い嘆息をもらしたとき、ぶらりと下ろした右手を白翔がきゅっと繋いでくれる。その体温が妙に心地よい。深緋は俯きがちに微笑み、手を繋ぎ返した。

「今日はありがとう。凄く楽しかった」
「だな。深緋が予想以上に喜んでくれたから、俺も嬉しかったし。おまえとの写真も宝物にする」
「……うん」

 鞄の中に仕舞ったスマホを取り出し、白翔が送ってくれた写真を改めて見つめ直した。この写真を見るたびに、きっと今日のことを思い出すのだろう。