吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

「帰って早々で悪いけど。深緋に話があって待ってたんだよ」
「……話?」
「手紙のこと」

 手紙、と聞き、ハッと息を詰める。女人の谷へ行くことと、儀式を受ける手段、白翔の体調で頭がいっぱいだったため、あの不審な手紙のことをすっかり忘れていた。不安から眉を寄せ、祖母にわかったと目配せする。

「それじゃあ、白翔。また明日……」

 俯きがちに手を振ると、白翔が「え」とうろたえ、「吸血(あれ)はいいの?」と尋ねた。

「大丈夫。ひと口だけど。まだ採血した分が家にあるから」

 そう答えてすぐ、どうしてかざわざわと胸騒ぎがした。

 “見張られている”。あの三枚の写真から感じたメッセージを不意に思い出した。日傘の梅雨先を上げて、慌てて周囲を確認する。向かいに建つ賃貸マンション、隣りにある一軒家、その先に続く十字路。目視できる範囲ではだれの姿も認められない。

「深緋?」と白翔が心配そうな面持ちで顔を覗き込んだ。

 写真の件について、白翔に言うべきか言わざるべきか。中々決められずにいると、「ハクトもおいで」とすんなり祖母が後押ししてくれた。

「昨日の夜だよ。今度はハクトの写真も入ってた」
「……え?」

玄関に上がってすぐ、祖母が神妙な顔つきで深緋の目を見た。

「写真って? なんのこと?」

 お邪魔します、と言ってすぐ、白翔がキョトンと目を瞬く。