吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 何がそんなにおかしいのか。二人でひとしきり笑い合ったあと、ねぇ、と再び声を掛けた。

「白翔はさ。私のこと、怖いとか思わないんだね?」
「あ、うん。それは多分、愛の力で」
「ふふふっ、なにそれ。人間じゃないんだよ? 気味悪いとか、普通思わない?」
「思わないよ。それが深緋なんだから」

 これが私……。意表を突かれてハッとした。穏やかな水面(みなも)に丸い波紋ができて広がっていくように、静かに全身へと沁み渡る。気を許すと涙が出そうなほど、素直に胸の奥へと響いた。

 人間じゃない自分を丸ごと受け止めてくれるのが、こんなにも嬉しい。深緋は口元に手を当てて、思わずそっぽを向いた。そして「ありがとう」と呟いた。


 電車を使っての帰路を経て、ようやく自宅前に帰り着いたとき。玄関先の門扉が開き、だれかがこちらへ向かって手を振った。少し近づき、祖母だとわかる。

「リリーさん」
「お帰り、深緋」

 言ってすぐ、祖母は深緋の変化に気がついた。隣りに並ぶ白翔へ目を走らせる。二人の顔を交互に見比べて、全てを察したように笑みを浮かべた。

「なるほど。全部話したんだね?」
「うん」

 白翔が重度の貧血で病院に運ばれたのは、つい昨日のこと。深緋はいまだに吸血せず、二十七歳の外見でいた。