「それ。私たち一族の間で語り継がれてきた伝承なの。リスクはその絵本を読んだら分かるよ」
それから程なく歩いた場所に、最寄駅の改札口を見つけて駅舎に入った。切符を買い、改札を抜けてから階段を降り、ホームにある緑色の椅子に並んで座る。
電光掲示板を確認すると、電車が来るのはおよそ十五分後になっていた。
白翔は何も言わずに絵本を開いた。蝉の鳴き声が騒々しいなか、パラリとページを捲る。一ページあたりの文字数が少ないので、順々にページを目でなぞり、あっという間に“おしまい”へたどり着いていた。
「なるほど」ポツリと呟き、白翔が絵本を閉じた。
「ようするに……恋をすることがリスク、ってこと?」
「うん」
白翔から絵本を受け取り、またバックの中へ仕舞い込んだ。
「童話にある通り、女吸血鬼にとって恋愛は禁忌なの。恋をしたらその対象者以外からは吸血できなくなる。私も白翔以外の血だと拒絶反応が出るようになった」
「……え。拒絶、反応?」
「そう。まるで泥水を口に含んだみたいな異臭が凄くて、たったの一滴も飲み込めない。私はもう、白翔から血をもらわないと生きていけないの」
「生きていけない、って」
「白翔から血を吸えなくなったら、死ぬってことだよ」
白翔を真っ直ぐに見つめ直すと、途端に彼の顔がくもった。丸い焦げ茶色の瞳が不安定に揺れている。
それから程なく歩いた場所に、最寄駅の改札口を見つけて駅舎に入った。切符を買い、改札を抜けてから階段を降り、ホームにある緑色の椅子に並んで座る。
電光掲示板を確認すると、電車が来るのはおよそ十五分後になっていた。
白翔は何も言わずに絵本を開いた。蝉の鳴き声が騒々しいなか、パラリとページを捲る。一ページあたりの文字数が少ないので、順々にページを目でなぞり、あっという間に“おしまい”へたどり着いていた。
「なるほど」ポツリと呟き、白翔が絵本を閉じた。
「ようするに……恋をすることがリスク、ってこと?」
「うん」
白翔から絵本を受け取り、またバックの中へ仕舞い込んだ。
「童話にある通り、女吸血鬼にとって恋愛は禁忌なの。恋をしたらその対象者以外からは吸血できなくなる。私も白翔以外の血だと拒絶反応が出るようになった」
「……え。拒絶、反応?」
「そう。まるで泥水を口に含んだみたいな異臭が凄くて、たったの一滴も飲み込めない。私はもう、白翔から血をもらわないと生きていけないの」
「生きていけない、って」
「白翔から血を吸えなくなったら、死ぬってことだよ」
白翔を真っ直ぐに見つめ直すと、途端に彼の顔がくもった。丸い焦げ茶色の瞳が不安定に揺れている。



